『ニーア オートマタ』レビュー

今回遊んだゲームはこれ。

知る人ぞ知る鬼才、ヨコオタロウ氏が手掛ける『ニーア』シリーズ第2作目。開発は『ベヨネッタ』で知られるプラチナゲームズ

独特の世界観と人類の願いを叶えた極上のお尻で世界中を魅了した、PS4世代を代表するヒット作の一つです。

 

今年はスイッチにDLC入りの完全版『ニーア オートマタ ジ・エンド・オブ・ザ・ヨルハ エディション』が移植されますね。これを機に触れる人は多いのではないでしょうか。

 

この度、アンドロイドと機械生命体のサブクエストをそれぞれ100%クリア。その上でEエンドまで遊びました

プレイ時間は大体40時間くらい。ゲームの仕様上、Eエンドまでの正確なプレイ時間は不明です。すみません。

一応各種類のクエストを100%クリアしたプレイレコードを貼っておきます。

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以下、レビュー。

良かった所

救いようの無い世界観

今作のディレクター兼シナリオライターであるヨコオ氏は代表作である『ドラッグ・オン・ドラグーン』を始め、陰鬱な世界観と救われないストーリー、複数に分かれたエンディングの独特な構成で知られます。

その作家性は本作でも遺憾なく発揮され、各エンドの内訳を大雑把に解説すると以下のような感じ。

 

Aエンド→第一部完

Bエンド→第一部の別視点

Cエンド→第二部完(終盤の選択で片方を選んだ場合)

Dエンド→Cエンドのアナザーエンド

Eエンド→特殊スタッフロール

 

5周もゲームやらせるの?と心配に思われるかもしれませんがご心配なく。

第一部はそもそもそんなに長くないし、BはAをクリアすれば比較的あっさりクリア可能です。CとDはそれぞれ第一部完から話が続くしCエンドを達成すれば細やかなチャプターセレクトを選べるので、Cをクリアすれば直ぐにDはクリア可能。

EはCとDのエンディングを見れば速攻でそのルートに進むしミニゲームのようなものなので、周回のストレスはほぼ無いと言っていいでしょう。

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本筋であるA~E以外にもF~Zエンドが存在。

これはおまけみたいなもの。本筋の物語から外れて単独行動を取ったりすれば回収可能で、やり込みたい方はネットでやり方を調べて回収しましょう。

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そして、ストーリーそのものの評価に移ります。

大筋の軸は、アンドロイドと機械の荒廃した地球における代理戦争。地上は数千年前宇宙から侵攻して来たエイリアンによって殲滅されており、現在はそのエイリアンが使用した生体兵器"機械生命体"が支配しています。

人類は機械生命体の脅威から逃れる為に月へと移住。その代わり戦闘能力に特化したアンドロイド"ヨルハ"を創造して地上に残し、彼らは人類の為に地球を取り戻さんと長きに渡って機械生命体と戦い続けています。

 

ヨコオ氏の作風もあって、何というか鬱ってよりは虚無感が凄いです。あれこれと考えても、結局は「全ての存在は滅びるようにデザインされている」というゲーム開始直後の2Bの独白に何もかも終結する感じ。

何かがきっかけで心が壊れた人の描写が特に秀逸で、全ては空虚ゆえに台詞の一つ一つにもかなり訴え掛けて来るものがある。

アンドロイドや機械の心という古典的なSFのテーマでありながら、ここまで重く残酷で美しいシナリオを書けるのはヨコオ氏ならではじゃないでしょうか。この心にぽっかり穴が空くような感覚は確かに癖になります。

 

本作を象徴する存在として知られる主人公"2B"より、もう一人の主人公である"9S"の方が個人的には強烈でした。

声優は今でこそ鬼滅の炭次郎で広く知られる花江夏樹氏。氏の優れた演技力もあって序盤の飄々とした感じから終盤の心身ともに壊れて行く様で、本作を真に象徴する非常にインパクトの強いキャラだったと思います。

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そんな空虚を絵に描いた様な世界を、プレイヤーはオープンワールドでじっくりと堪能することとなります。

この雰囲気作りも非常に気合が入っています。特に遊園地は、人類が消え去り機械生命体が支配した地上という本作の異様な世界観の最大公約と言えるでしょう。ここはBGMも良曲揃いの中でも特に良く、癖になる人は多そうです。

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鬱耐性は少々必要ながら、刺さる人には無限にぶっ刺さるヨコオワールド。

ここまで世界がこのゲームに熱狂した理由は、この全てが「空虚」で要約出来る世界観とストーリーにあると言っても過言ではないと思います。

やり込み甲斐のあるサブクエス

サブクエは大体60程ですが、そのどれもが非常に拘っていました。

プレイヤーキャラはそのクエストによってボイス付きで専用の台詞を喋るし、一つ一つを消化して行くと後の展開の伏線にもなる様なクエストもあって面白かったですね。

 

中でも機械生命体のクエストは世界観の掘り下げの為にもプレイは推奨されると思います。

この世界、機械生命体が地上を支配してから余りにも時が経ち過ぎたのです。無知で無感情な機械生命体に、旧世界の文明跡地から知識と心を学ばせ、個々の人格果ては多様性さえ与えるには十分でした。

 

最初こそ、付け焼刃の知識から「人間の真似事」をする機械生命体に不気味さや気持ち悪さを覚えることでしょう。殲滅せねばと。

ですが、それはあくまでもこの世界を生きる機械生命体の一部に過ぎません。本当に色んなヤツがいるのです。

 

アンドロイドを発見次第襲って来る奴がいれば、その逆で争いを望まず共存と話し合いを第一に考える奴がいる。無論そんな楽観的な平和主義者を良しとしない奴もいるから、同族でも容赦なく襲って来る奴らがいる。

スポーツマンで主人公に正々堂々な戦いを挑んで来る奴、家族の為を考えて一人で無茶してしまう奴、戦う以外の生き甲斐を見つけてる奴…。彼らは単なる敵ではなく、まるで在りし日のヒトのように各々個性を持ち、この地上に根付きつつあるのがメインストーリーだけならずサブクエを通して理解出来ることでしょう。

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彼らは殺されるべき敵であり、その言葉一つ一つはただの人間の不出来な真似事で何の意味も価値もない。アンドロイドの存在意義ともいえるその前提に、2Bや9Sはおろかプレイヤーでさえ揺さぶりを掛けられてしまうのです。

プレイしてて、段々機械生命体に感情移入し愛着を持って行く自分がちょっと怖かったです。中には半端に人間であるがゆえのコミカルな言動やネタイベントもあって、陰鬱な世界の怨敵でありながら彼らは癒しとしても機能しています。

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機械生命体は本当に敵なのか。アンドロイドの存在意義は、本当に彼らを殲滅し人類の英華を地球に取り戻すことなのか。

正義とは何か、正義は何処にあるのか、正義は存在するのか。

これから遊ばれる方にはサブクエを消化しながらたっぷりと疑問を感じつつ、最後までプレイしてその真相をその目で確かめて欲しいです。

プラチナ仕込みの滑らかなアクション

本作の開発はベヨネッタで知られるあのプラチナゲームズで、彼らが手掛けてるだけあってモーションのカッコよさや爽快感は一級品。どんな動きをするにせよ兎に角滑らかで、特に2Bのモーションは色んな意味で絵になります。

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(注釈 : 公に開示するには不適切と判断し画像を縮小。)

(推奨 : 駆り立てられる好奇心を抑えられないのであれば画像をタップ。)

(疑問 : 人類文明における身体的魅力への執念と願望。)

 

避ける→攻撃→避ける→…の基本的にはこの繰り返しなので少々大味な感じもありましたが、シナリオと雰囲気を楽しみたい方にとっては難易度は控えめで有難いことでしょう。

どうしてもクリア出来ないって方の為にオートバトルも用意されており、あくまでも見栄え重視な戦闘システムで基本的には誰でもクリア出来ると思います。

気になった所

シューティング要素

兎に角随所で謎のシューティングゲーム要素が入って来る。

 

空中戦や、ハッキングによる不具合除去。それらの行動を行うにはこれをやらなきゃいけない訳ですがまさかの弾幕シューティング仕様であり、難易度ノーマルでもかなり難しくてはっきり言ってちょっと苦痛でした。

特に二周目のBエンドルートでは頻繁にこれをやらされるのがかなりキツい。ハッキングは画面もチープなので尚のこと辛かったです。

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開発もこれは分かっているのか、ハッキングに限ればオートバトルにすると被ダメなし・自動照準と相当楽になります。

ゆえに、何もこれに関してはノーマル以上で意地張ってクリアする必要は無いと考えます。

クリア出来ない、めんどくさいと感じれば遠慮なく難易度を下げてオートバトルを使うべきです。

 

詳しくは言えませんが正直、ラストのラストにまで出張って来るのは辟易としました。こちらもまあ救済措置があるので何とかなりますが、オフライン勢はまず詰みでしょうね…。

まとめ

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全体を通し、とにかくゲームというよりはこれ一本でヨコオ氏の頭の中にあるニーアオートマタという「世界」って表現が正しいと思いました。非常に作家性の強い作品だと思います。

 

とはいえゲームを一つの世界として捉えた物としては随一の完成度を誇っていることも確かで、UIはじめシステムとストーリーの擦り合わせに関しては一種病的と言える程の拘りが見えます。

 

「着いて来れる奴だけ着いて来い!」という作品ではありますが、2022年8月時点で売上はなんと650万本以上。

ギンギンに尖っているが故にその魅力は圧倒的な程に唯一無二と言うべきでしょう。人を選ぶ作品ながら、これ程多くの人が言葉通り着いて来たのも納得出来るパワーを今作からは感じました。