『.hack//G.U. Last Recode』レビュー

今回遊んだゲームはこれ。

コアな人気を持つネトゲものRPG.hack』シリーズの一編を担い、数あるシリーズでも特に人気が高い作品です。

今作はPS2で発売されたG.U.連作3部作をリマスターし、+αを加えてLast Recodeとして一つに纏めたもの。

 

.hackは「ドットハック」と読みます。

このシリーズはアニメの『.hack//SIGN』以来ですね。梶浦由紀氏が手掛ける楽曲が本当に素晴らしい作品だったと記憶しており、これを超えるサントラのアニメに未だ出会えてないレベルです。

 

この度、vol.1〜4を全部クリアエストをフルコンプ全仲間との友好度をMAXにしました

ここまでのプレイ時間は合計約66時間

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以下、レビュー。

良かった所

気合の入ったネトゲ感の再現

本作の舞台は一貫して"The World"と呼ばれる、架空のゲーム会社"CC社"が製作したネットゲーム。.hackの基盤はこのネトゲであり、ここで起きた仕様外のトラブルや事件を巡る物語が基本的な軸となります。

 

いわゆる劇中劇ならぬ「劇中ゲーム」なので、プレイヤーはゲームの中でゲームをプレイするというユニークな仕様です。

キャラはファンタジックなデザインが多いのですが、そういう種族という訳ではなくNPCも含め皆一様にゲームのアバター。中身は現実世界の普通の人間なので、会話を通して見える内と外のギャップが結構面白いです。

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字幕や会話の中でも「w」や顔文字が挿入され、彼らが異世界の住民ではなくネット利用者の一般人であることが頻繁に思い出されます。名前もネットのユーザーネーム特有な変なのから、真面目な感じなのまで様々です。

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その辺のモブNPCと会話するだけでもそのギャップ感が楽しめるのですが、これはモブに限りません。

The Worldに実装されているメールシステムで仲間キャラとプライベートなやり取りをすることも出来ます。これは物語の進捗を兼ねたものがあれば、単に主人公と交流を深め合う為のものもあってこちらはキャラの深掘りをするのに楽しめるでしょう。

これを通してストーリーとは関係ないキャラの人間味のある一面、リアルにおける人物像や立ち振る舞いが少しずつ見えて来ます。

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公式チャットなんかも実装されています。現実ので言えばこれは2ちゃんねるっぽい雰囲気で、The Worldのユーザーが色んな形で交流する様をリアルに再現しています。

レスを返すことも出来、このやり取りの中で特定イベントの為のフラグを立てることも可能。広大なネットゲームの中でやり込みユーザーの間だけで発見した面白い仕様とか、独特のワクワク感がありました。

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物語の特性上どうしてもネット世界のアクシデントって面に偏ってはいるんですが、仕様内の要素も悪くないと思います。

ぶっちゃけクエストは各個内容は薄いし少ないのですが、vol.3の「さらばメカ・グランディ」はいきなり濃い話で良い意味で驚きました。あとvol.4除いた全vol.通して最強の裏ボスが仕様内の大ボスなのは、開発がこの劇中ゲームをリスペクトしてる感じがあって良かったですね。

 

"PK(プレイヤーキラー)"と呼ばれる悪質ユーザーを、ゲーム中で二つ名付き賞金首として扱ってたりしてるのはどうかとは思いましたがw どうなってる運営の倫理観。

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3つのワードを組み合わせて顕現する微妙に仕様が違うエリアが無数に存在するなど、ネトゲらしくユーザーが沼りそうなシステムも好きでした。これは確かにチャット欄が盛り上がるのも納得ですね。

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全体的に、劇中ゲームとしての作り込みや納得感、あるある感は徹底していると思います。ゲームを体験するゲームと言われると何だか変な感じですが、それだけに他のゲームには無い不思議な感覚を覚える世界観だと思います。

人との関わり合いで少しずつ変わって行く、ハセヲの成長物語

ゲームは元のPS2版が全3部作構成であり、それに伴って物語も3部作…というよりは3章構成という形を取っています。

vol.4がありますが、これは後日談の短編です。

 

前述したように軸となるのはネット世界の仕様外トラブルを巡る物語なのですが、何と言っても特筆すべきはその主人公の成長物語です。

 

主人公ハセヲのvol.1におけるファーストインプレッションは、一言でいえば最悪だと思います。とにかく他者を寄せ付けない攻撃的な性格で、目上には無礼だし優しく接してくれる人にもかなり手酷く拒絶する捻じ曲がった奴です。

PKK(PKキラー)のハセヲ」「死の恐怖」といった異名で知られThe World全域で畏怖される嫌われ者で、おおよそ主人公らしさは皆無。一応そんなことを繰り返すのにも性格の根源にも理由はあるのですが、その捻くれた性格から強い不快感を覚えるプレイヤーは多いと思います。

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しかし、彼はThe Worldを取り巻く事件を通して仲間と交流を繰り返す内に少しずつ変わって行きます。

仲間を大切にすること、仲間の想いを尊重すること、強大な力を正しく扱うこと、誰かと共感し合うこと。初めこそ他者を拒絶していたハセヲですが、そう言ったものを仲間との交流を通して学んで行く。

vol.3の後半になると、もう滅茶苦茶仲間思いの熱い奴且つ皆を引っ張るザ・主人公になってます。ここまで序盤と終盤で人格も印象も変化する主人公は中々に珍しいくらいです。

 

他者を拒絶する主人公が仲間との交流を経てちょっとずつ変わって行くのは、SIGNのプロットと同じだと思いました。あちらの主人公はハセヲとはまた別ベクトルのコミュ障ですが。

 

ネトゲ内で誰からも嫌われ自らも心を閉ざしていた「死の恐怖」が、主人公としてヒーローとして覚醒して行く熱い成長物語です。中盤とある仲間が離脱しようとするのですが、それを必死で説得し食い止めようとする姿に彼の大きな変化を感じ感慨深くなりました。

キャラに感情移入をするのではなく、見守るような気持ちで物事を俯瞰して見る方がこの物語は楽しめると思います。

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また、そんな彼と仲間達の完成された絆を証明するかの様にクリア後は各キャラとの友情イベントがあります。女性キャラとは結婚イベント

これをやるには各キャラ"好意度"と呼ばれるハートマークのメーターをMAXにしなきゃいけません。"連撃"やアイテムプレゼント、面倒ならvol.3クリア後の"ゴッドチムチム"解禁まで後回しにして仲間と仲良くなりまくりましょう。

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高クオリティなアニメムービー

本作の開発は最近で言えば『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』で知られるサイバーコネクトツー(CC2)。

鬼滅は圧倒的なアニメ絵の再現度とグラフィックで話題になった作品ですが、本作のムービーのクオリティにはその前身・一端が見られます。当時のアニメ系RPGにしては相当頑張ってるんではないでしょうか。

 

バトルはド派手でカメラアングルも秀逸で、何よりキャラの表情が良いですね。

感情豊かで、この頃からCC2のアニメに対する強いリスペクトと向上心が見えます。

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またアニメ繋がりではありますが、本作の前日譚的位置付けで『.hack//Roots』というアニメがあります。

ストーリーの幾つかはこれを見てる前提なのがあるので、より楽しみたい方はこのアニメも見ると良いのではないでしょうか。

気になった所

良くも悪くもストーリー性に偏った作り

まあこういうゲームは過去にも当ブログで幾つかレビューはしてるんですが、本作も例に漏れずと言った所があります。

元がPS2のレトロゲー(vol.1が16年前)なのである程度は目は瞑るべきなのかもしれませんが、それを加味しても厳しい面が少々ある気がしました。

 

バトルはARPGなんですが、仲間との好意度の兼ね合いもあって連打→連撃→連打→連撃…のワンパターンになりがちでした。完全アタッカーのハセヲ以外使用出来ないので、ロールプレイも出来ないですし。

レベルも驚く程モリモリ上がるので、育成の過程で味方がインフレしがち。折角育成要素は豊富なのに、それを披露する場所が限られてしまうのは勿体無いです。

 

それと個人的に、バトルフェイズへの移行がちょっとなと思いました。

フィールドは広く無いのに、微妙に広い雑魚の索敵範囲に入ると強制的にバトルに引き摺り込まれます。狭い場所だとこれがかなりきつく、面倒だなと思っても、数量の限られるアイテムを使いでもしない限り逃げられません。

一応シームレスなシンボルエンカウントですが、これだと却ってストレスでシステムの良さを殺してしまってる気がします。

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主人公の特殊能力から成る"憑神バトル"も、いきなり『ANUBIS』みたいな3Dシューティングになって何だかなぁと。

仕様外バトルという設定上経験値も入らないし、イベントバトル兼ミニゲーム感が否めません。演出は派手なので好きですが。

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もっとも、難易度はかなり低いです。

バトルはある程度は割り切って、基本的にはストーリーと劇中ゲームの雰囲気を楽しむものとして捉えればいいでしょう。

まとめ

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システム面は気になる所がありますが、正に「歩くような速さで」少しずつ人として成長して行くハセヲの物語は実に見応えがありました。

特にエンディングの清涼感は素晴らしく、長い物語の締め括りに流れるLieNさんの歌はプレイ後も胸に染み渡って離れません。SIGNもそうですが、本当に音楽というものに恵まれたシリーズです。

後の鬼滅やJOJOのゲームにも繋がるCC2の優れたアニメ映像・演出も必見で、今見ても古臭さは薄いと感じました。

 

またこれはゲーム内容そのものとは関係ありませんが、奇跡体験!アンビリバボーで放送された感動エピソードでも有名な作品です。

こちらは本作のファン非ファン関係なく目を通して欲しい、本当に素晴らしいエピソードです。このお話に胸を打たれたのをきっかけにし、本作を手に取ってみるのも全然良いと思います。