『ピクミン4』レビュー

今回のレビューはこれです。

任天堂の人気シリーズ『ピクミン』のナンバリング4作目。前作『3』から何と10年ぶりの新作となります。

どうでもいいことですが宮﨑駿監督の『風立ちぬ』から『君たちはどう生きるか』も、それぞれ全く同じ年に公開され全く同じ年数をファンが待ったのですよねぇ。

 

自分このシリーズかなり思い入れが強い方でして。特に二作目『ピクミン2』は、子供の頃本当に猿のようにやり込んでたのを覚えてます。

ポケモンと並んで自分がゲーム好きになるきっかけと言っていいシリーズなので、本当に楽しみな作品でした。

 

取り敢えず発売日からぶっ通しで遊んでみました。プレイ時間は約41時間

多分概ね全クリしたんじゃないですかね。もうやること無いくらいしゃぶり尽くしたと思います。

 

以下、レビュー。

良かった所

ピクミンと言うシステムで考え得る限りの"遊び"を詰め込んだ集大成

ピクミンというシリーズは、大まかに二種類あります。

一つ目はタイムリミットなど活動制限の中で如何に効率よく迅速に目標を達成できるかを問われる"1路線"(1と3が該当)、二つ目は用意された空間を自由に探索し自分のペースで目標達成を目指す"2路線"(2が該当)。

基本的な軸は最大100匹連れて来れるピクミン達を使役して戦う、運ぶ、減ったら増やすなのですが、この路線違いによって同じシリーズでありながら趣が異なります。

 

これはファンの間でもどちらが良いかはかなり意見や好みが分かれる所であり、度々議論が起こります。

実際に公式インタビューだとスタッフ内でもこの方向性に関する議論は交わされるらしく、これらの路線違いはこのシリーズを知る上で大きなポイントとなるでしょう。

開発者に訊きました : ピクミン4|任天堂

 

で、今作ですが簡単にまとめると、大まかには2路線をベースに1と3の良い所もミックスしたシリーズの集大成と言えるのではないでしょうか。

箱庭フィールドを歩き回って未知の惑星における不可思議な原生生物にピクミンの力を借りて対抗し、散らばったお宝を集めつつ時には洞窟を発見し更なる探検へ。この感覚は正に、子供の頃に大好きだったあのピクミン2の感覚そのものでした。

 

1や3も好きなのですがやはり自分としては2の方向性の自由探索型ピクミンをまた遊びたいと思っていたので、洞窟探検も含めて時間を忘れるほどに夢中になってしまいました。

後にも先にも寝る間を惜しんで三日で40時間も遊ぶゲームなんて今作だけな気がしますw

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旧文明の名残が強く残されたフィールド造形に、地上では見られない原生生物との出会いや斜め上なお宝の数々。ファイナルフロアで待ち構えるボスに自ら出向き、BGMと共にシームレスに戦闘が開始されるまでの緊張感。

やっぱり2が好きな身としては洞窟探検のワクワクは何物にも代え難く、律儀にどの洞窟でも原生生物の死骸を含めスッカラカンになるまで運び尽くすほどに探索してしまいます。

 

シリーズにおいてせめて洞窟だけでもと復活を望んでいた身として、その点に関しては間違いなく大満足でした。

もう少し階層の深い洞窟は欲しかったとは思いますが、それでも20年近くぶりにこの感覚を再び味わえただけでも胸がいっぱいです。

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また、2の頃は洞窟と言えば地下探索だけだったのですが、本作ではそれだけに留まりません。ライバルキャラが入り口の前で待ち受けている洞窟も複数あります。

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これらは制限時間内にフィールド内の物資をノルマ分運ぶ"ダンドリチャレンジ"、同じフィールドでCPUと運んだ物資の合計価値を競い合う"ダンドリバトル"の二つのうちどちらかです。

それぞれ過去のシリーズで言えば前者は3のミッションモードにおけるお宝運び、後者は2の2Pバトルって所でしょうか。

 

最初は正直言って洞窟探検をやりたくて煩わしいと思っていたのですが、やり込み始めると非常に奥が深くて探索と同じくらい夢中になってしまいましたね。

全お題のプラチナランククリア、クリア後に解放されるエンドコンテンツ"葉っぱ仙人の挑戦状"を全てクリアするまで全く苦なく遊べました。

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特にダンドリチャレンジはDLCでもっとお題が欲しいと思いました。これ滅茶苦茶楽しいです。

トライ&エラーを繰り返して徐々に効率を高め、制限時間内に物資全てを運び終えたあの快感は本編の洞窟におけるまったりした物資運びとは全く異なる趣がありますね。

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また、もう一つの遊び要素となるのが新ピクミンである"ヒカリピクミン"が活躍する夜探索です。

このヒカリピクミンは、火・水・電気・毒全てに耐性を持つ正に最強で無敵のピクミンとなります。

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このピクミンを使って夜になって凶暴化した原生生物の跋扈するフィールドを自由に探索……ではなく、タワーディフェンスです。

ヒカリピクミンの根城である"ヒカリヅカ"を、光に誘われて襲ってくる原生生物から夜明けまで守り抜くのが目的となります。

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これもこれで楽しかったです。ピクミンで犠牲を一切気にしなくていい遊びってのは新鮮でした。

難易度が高くなるとボスキャラも平気で襲ってくるので、印象的なステージが多かったですね。

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更にストーリーを暫く進めると"オリマー遭難記"という形でなんと1のストーリーを今作のシステムで簡易的に追体験できます。勿論主人公はオリマーであり、登場するピクミンも赤黄青のみ。

流石に原作と比べるとボリュームは少ないものの、テンポよくクリア可能なのもあって1や3本編よろしく周回プレイとの相性は抜群です。1路線が好きという人も満足できるのではないかと思います。

 

正直DLCで有料で売っても良いレベルの内容なのに、買い切りでここまでやるかと頭が下がりましたよ。

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ここまで熱く語りましたが、これ程各々方向性の異なる遊びを一つのゲームに入れておきながらその全ての完成度が極めて高く、ストーリーの破綻やシステムの食い合わせの悪さが何一つ発生していません。

これはもう流石の任天堂と言った所でしょう。ゲームにおいて遊びという要素を任せたらやはり右に出る会社なんていないのだと思いました。

より洗練され、シリーズの常識を見直したシステム

システム面はより快適に遊べるように改善されてる部分があれば、これまでの常識を見直して敢えて変更した点など様々でした。

 

まず、拠点のスポットが複数あってそこに行けばいつでも拠点が移動出来るのが良かったですね。

これまでのシリーズでは拠点が一つしか無くピクミンに物を運ばせるのにも遠ければ遠いほど時間が掛かってたので、これによって劇的に運送が快適になりました。

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また、今作では隊列に参加させられるピクミンが3種類のみです。

シリーズも四作目となり毎回新ピクミンが増えてるので、夜限定のヒカリを除けば今作では8種類となりました。

これに関しては意見が分かれるかもしれませんが、これまではどうしても全種連れて行かなきゃいけないみたいな強迫観念があったので、予め割り切らせてくれるのは自分としては有り難かったかなと。全種だと効率が悪い時もありますからね。

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それからピクミンはその性質上まともに遊べば犠牲が出まくるゲームであり、それが嫌という方の為に巻き戻し機能も実装されてます。大量死が起きた時、単純にピクミンの死を受け入れられない時に重宝しますね。

甘えだと思う人は勿論使わなくて大丈夫です。ただ、終盤は若干これをやること前提の難易度という感じがあるのはどうかと思いましたが…。

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また、今作から追加された氷ピクミンも注目の要素だったのですが、それ以上に最大のポイントは宇宙犬のオッチンですね。

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このオッチンは、単にピクミンの出動上限数である100匹目に対するもう1匹目として活躍するだけではありません。

ピクミンとリーダーを背中に乗せてより素早く小回りの効く移動が出来たり、ため技の突進攻撃で敵を一時的に怯ませたりなどオッチンにしか出来ない特技がてんこ盛り。

強化次第では全ての属性を無効化出来たり1匹でピクミン100匹分の運搬が出来たり、果ては単体でも強雑魚を軽々倒せたりと非常に頼れる仲間として活躍します。

 

メインストーリーで困った時は概ねオッチンを頼れば大体なんとかなるので、詰まった時の救済措置としても大いに役に立つでしょう。

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全部この子で良く無い?となりそうですが別にそんなことはありません。ピクミンと違いオッチンは常に1匹のみ。

ダンドリ系や夜探索はオッチンと各ピクミンの特性を正確に把握した上でそれぞれの役割に適した段取りをしなければプラチナランクは程遠く、やり込み勢にとっても自主的な縛り不要な必須キャラとして機能してます。

 

ピクミンとしては前代未聞なハイスペックなのですが、ゲーム性は破壊しないし寧ろより深みを与えてるのが素晴らしいですね。

1と2の原生生物が多数復活

シリーズの看板となるピクミン達のその愛らしい見た目と仕草に反し、舞台となる謎の星は常にほんのりポストアポカリプスの香りを纏います。

そんな世界で自然界は独自の進化・発展を遂げ、様々な姿形や生態を持つ独特の原生生物達が息づいて来ました。ピクミンを含め、多くのファンがそれら生き物達に心を掴まれたことでしょう。

 

ピクミンという作品は、ファンにとっては敵となる原生生物の魅力も重要な要素となります。

 

勿論、その点に関しては今作でも全く期待を裏切りませんでした。

可愛い奴やちょっと気持ち悪い奴など、本当に幅広くて相変わらずの造形センスに脱帽します。
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特にボス原生生物のダマグモインフェルノは非常に良かったです。デザイン・演出・ボスとしての完成度共に本作の新規勢だと随一の完成度を誇ってると思います。

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既存も含め今作でも100種類近い原生生物が登場し、シリーズ恒例となる"オリマーメモ"の生態レポートも完備しております。

既存生物は過去作の流用なのが少し残念ですが、相変わらず一介のサラリーマンとは思えないほどの博識っぷり。新規生物達も生物学的な観点から妙にリアルに徹底的に掘り下げて貰えます。

 

これはシリーズを通して読み物としても読み応えがあるので、今作が初ピクミンという人も楽しんで貰いたいですね。

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しかし、今作の原生生物達のポイントとなるのは何より過去作1と2からの復活が多いという所でしょう。

PV時点でダイオウデメマダラやクイーンチャッピー、フタクチドックリ(成体)など多くの復活が示唆されていたのですがそうでないサプライズの復活枠もかなり多く、これはシリーズファンとしては凄く嬉しい要素でした。

 

特に1からの復活枠は初めてオリマーメモが用意されてるので、ファンは必見ではないかと思います。

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PVに出ていたダマグモキャノンを始め色んな意味で強いインパクトを残した原生生物が優先的に復活しており、ファンサービスとしても堪らない要素として機能していました。

来年でピクミン2すら20周年を迎えるので、自分を含め大人になった当時のキッズ達へのサプライズだと考えると、嬉しいのと同時にちょっと切ない気持ちにもなったりしたものです。

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気になった所

オートロックの仕様

敵やお宝を自動でロックオンしてくれるのですが、この仕様がちょっとなーと。

対象となる何かに対してこちらの意思と関係なく勝手に照準を定めるので、対象物が横並びになってる時なんかは思う通りに操作出来なかったりしてかなりストレスでした。

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作品としては殆ど完全な神ゲーに近いだけにここだけが操作性を阻害してて勿体無いですね。アプデでオートロックをオン/オフ出来るようにしたりと、どうにかならないのでしょうか。

まとめ

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ピクミン3から10年。2の自由探索路線からは実に19年。

長い時を経てリリースされたシリーズ最新作は、その高いハードルと美化された思い出を超えて余りある紛れもない集大成かつ最高傑作でした。

 

ファンの求める要素を余すこと無く詰め込んだ集大成でありながら保守的な作りにはせず寧ろ挑戦的。任天堂の遊びに対する貪欲なまでの拘りと完璧主義がこれ程の作品を作り上げたと言っても過言ではないと思います。

気が早いですが、今から5が待ち遠しくて堪りません。

 

ストーリーも1のパラレルワールド的な感じなのでピクミン初心者にも自信を持ってお勧め出来、個人的にはスイッチのマストバイの一つに数えられます。

任天堂宮本茂Pの本気が生み出した珠玉の一作。一人でも多くの人に遊んで欲しいゲームだと思いました。