『東方少女綺想譚』レビュー

今回のレビューはこれ。

同人サークル『第N本鋪』によるスイッチでDL可能な東方二次ゲーム。

かのSFCの名作『スーパーマリオRPG』の東方パロディだそうです。よってサブタイトルも、そのまんま"SUPER TOUHOU RPG"。

 

スイッチの東方二次ゲーレビューは『幻想少女大戦』に続いて2作目ですね。あれが非常に面白かったので、最近配信された今作を流れで購入しました。

 

クリア状況は、裏ボス含め各所イベントボスを全員撃破したって所。その上でラスボスを撃破

プレイ時間は約24時間

f:id:RH6754:20221012171340j:image

 

以下、レビュー。

良かった所

めちゃくちゃテンポが良くて楽しい戦闘システム

自分はスパマリRPGをやったことは無く、その派生である『ペーパーマリオ』や『マリオ&ルイージRPG』はそこそこ遊んでます。本作のパロ元であるスパマリRPGはそれらのご先祖様と言えますが、それだけにペパマリやマリルイしか知らなくても今作は十分に楽しめました。

 

ターン制コマンドを軸に、敵の攻撃はタイミング良くボタンを押してガード。自機のターンでもボタン連打やタイミングよくボタンを押すアクションが求められたりと、戦闘は正にマリオRPG系統のそれでした。

最後にこの系統を遊んだのは確かDSのマリルイ2ですね。凄く懐かしいゲーム制で滅茶苦茶楽しかったです。

 

マリオRPG系を遊んでる人は分かると思いますが、レベルよりもとにかくボタンアクションとガードタイミングの見極めが非常に重要です。魔法攻撃とかはかなりタイミングがシビアですが、上手くやればガード出来ます。

このシステムで緊張感のある戦闘を楽しめるのがシリーズの醍醐味なので、そこをリスペクトして再現出来てるのがとても良いと思いました。

f:id:RH6754:20221012220259j:image

f:id:RH6754:20221012220441j:image

 

原作のものは知識でしか知りませんが、いわゆる"なにかんがえてるの"も実装されてます。

こいしの特技である"お姉ちゃんカモン!"でさとりが敵の心の中を読み、ステータスとついでに今何を考えてるのかを教えてくれます。ボスキャラは勿論、雑魚一体一体にも異なるテキストが用意されてるのが実に凝ってますね。

f:id:RH6754:20221012215709j:image
f:id:RH6754:20221012215704j:image

 

ゲームスピードの速さも評価したい所です。敵のターンも味方のターンもかなりスピーディに行われ、テンポ良くとんとん拍子で進みます。

これはまあ反射的なアクションを求められるがゆえにそうなってる面もありますが、個人的には本家よりもテンポが良くて楽しかったです。経験値は入りませんがお札をフィールドで雑魚に投げれば戦闘するまでも無く雑魚を消せるので、面倒な配置の雑魚はこれで潰せます。

f:id:RH6754:20221013150406j:image

 

マリオRPG系、特にマリルイが好きって人もかなりすんなり楽しめるのでは無いでしょうか。

マリルイがもう今後の展開厳しそうな中で、これがスイッチで出たのは有り難いことだと思いました。

色んなギミックや小ネタがある凝ったフィールド

本作の売りの一つとなるのは、ドット空間で再現された幻想郷という要素です。博麗神社や紅魔館と言った東方お馴染みのスポットが丁寧なドットで描かれ、それらを探索出来るのは大きな魅力です。

f:id:RH6754:20221013151020j:image

 

本作はお金の出がかなり渋く、何とかして金策を捻り出すのは余り推奨出来ません。

代わりにフィールドの至る所にアイテム箱が置いてあり、戦闘不能からの復活アイテムや強力なアクセサリーは比較的そこで手に入り易いです。その為、効率的なアイテム補充目的でも積極的な探索が推奨されると思います。

f:id:RH6754:20221013151257j:image

 

ただ探索するだけのフィールドでは無く、ギミックや小ネタが多いのもマリオRPG系ぽいなーと思いました。

赤い陰陽玉に札を投げてワープが出来る様になったりして、ストーリーを進める度に霊夢のフィールドアクションが増えて行きます。既に行き終わったフィールドにアクションが増えればまた戻り、探索し直すのもいいでしょう。

f:id:RH6754:20221013150609j:image

 

キャラの個性を活かしたミニゲームも豊富です。

赤蛮奇の頭を飛び移るみたいな移動過程のギミックでもTAが記録されたりして、やり込み要素として楽しめます。

f:id:RH6754:20221013151420j:image
f:id:RH6754:20221013151417j:image

至る所に配置されてるサブイベント

本作はストーリーをこなすだけで無く、イベントボスなどの限定イベントもかなり豊富。発生フラグがほぼノーヒントゆえに意識してイベント周りするなら攻略サイトが必須ですが、それでもやる価値はあると思います。

 

特にストーリー中で味方になるのはこいしと天子だけなので、咲夜やウドンゲみたいな他の仲間を集めたければイベントを探すしか無いです。

意外にも魔理沙は仲間にならないので注意。一応道端で取れるキノコの種類によってアイテムと交換してくれたりする役目はありますが。

f:id:RH6754:20221013151743j:image

 

超強力な裏ボスが用意され、他にも星熊勇儀なんかはラスボスともタメを張る強さだったので歯応えがあってかなり印象に残りました。

後半で出会うイベントキャラ程強力です。戦闘が楽しい今作としては嬉しい作り込みでした。

f:id:RH6754:20221013151526j:image

 

中にはストーリーや戦闘とは無関係なサービスイベントがあったり、某法務部が出動して来そうなギリギリアウトな小ネタもあります。

特に後者は実際にプレイしてその場所を見つけるまでのお楽しみだと思いますw 色んな意味で必見です。

f:id:RH6754:20221013122634j:image

気になった所

癖の強過ぎる立ち絵

何と言いますか本作はスパマリRPG的な部分より、真っ先に目に入るのはテキストにおける立ち絵なんじゃないかなぁと。

タイトルに載ってる霊夢の絵を見て分かる通り、とにかく大半のキャラが過剰なまでに巨乳です。それだけならまだしも、中には蠱惑的なポーズを取ったキャラがいたりとかなり強烈なセンスの立ち絵が殆どを占めます。

f:id:RH6754:20221013135745j:image

f:id:RH6754:20221012220022j:image

 

第N本舗の運営者であるn氏曰く、本作は「1から100まで私の大大大好きな要素だけで作ったゲーム」とのこと。第N本舗がそもそもR18な同人作品をメインに活動されてるのもあり、n氏の趣味嗜好をセーフな範囲で盛ったのがこれらの立ち絵と思われます。

 

流石にロリな三妖精とかは自重してますが、中高生以上の見た目年齢のキャラは高確率で氏のイメージが投影されてるように思います。

正直人を選ぶというよりは、東方二次の一般向け作品としては解釈違いな方がいそうで少し気になりました。幾ら東方が同人的解釈全般に極めて寛容とはいえ…。

最も、本作のストーリーは単純明快かつ終始コメディ寄りなので作風に合ってるとは言えますが。結局は好みの問題なのかもしれません。

まとめ

f:id:RH6754:20221012171442j:image

幻想少女大戦がキャラゲー、ストーリー寄りなのに対し、本作はシステム寄りと言った印象ですね。

スクウェア&任天堂タッグの名作をリスペクトしているだけあって、遊びとしては非常に完成度が高いです。プレイ時間は全クリした上でさして長くはありませんが、とても濃密なゲームプレイでした。

 

問題はその癖の強い立ち絵、キャラクターは全て霊夢とは知り合いでプレイヤーも既知の前提で話が進むと言った所でしょうか。あとBGMは全てフリーの物を使用してるので、東方BGMのアレンジを期待したい人は注意です。

 

諸々総合して、東方キャラで歯応えのある本格的RPGを遊びたいという人にはオススメの一作だと思います。東方キャラが好きで尚且つマリオRPG系が好きって人にも非常にオススメです。

『.hack//G.U. Last Recode』レビュー

今回遊んだゲームはこれ。

コアな人気を持つネトゲものRPG.hack』シリーズの一編を担い、数あるシリーズでも特に人気が高い作品です。

今作はPS2で発売されたG.U.連作3部作をリマスターし、+αを加えてLast Recodeとして一つに纏めたもの。

 

.hackは「ドットハック」と読みます。

このシリーズはアニメの『.hack//SIGN』以来ですね。梶浦由紀氏が手掛ける楽曲が本当に素晴らしい作品だったと記憶しており、これを超えるサントラのアニメに未だ出会えてないレベルです。

 

この度、vol.1〜4を全部クリアエストをフルコンプ全仲間との友好度をMAXにしました

ここまでのプレイ時間は合計約66時間

f:id:RH6754:20220925082828j:image

 

以下、レビュー。

良かった所

気合の入ったネトゲ感の再現

本作の舞台は一貫して"The World"と呼ばれる、架空のゲーム会社"CC社"が製作したネットゲーム。.hackの基盤はこのネトゲであり、ここで起きた仕様外のトラブルや事件を巡る物語が基本的な軸となります。

 

いわゆる劇中劇ならぬ「劇中ゲーム」なので、プレイヤーはゲームの中でゲームをプレイするというユニークな仕様です。

キャラはファンタジックなデザインが多いのですが、そういう種族という訳ではなくNPCも含め皆一様にゲームのアバター。中身は現実世界の普通の人間なので、会話を通して見える内と外のギャップが結構面白いです。

f:id:RH6754:20220925023223j:image

 

字幕や会話の中でも「w」や顔文字が挿入され、彼らが異世界の住民ではなくネット利用者の一般人であることが頻繁に思い出されます。名前もネットのユーザーネーム特有な変なのから、真面目な感じなのまで様々です。

f:id:RH6754:20220925022923j:image

 

その辺のモブNPCと会話するだけでもそのギャップ感が楽しめるのですが、これはモブに限りません。

The Worldに実装されているメールシステムで仲間キャラとプライベートなやり取りをすることも出来ます。これは物語の進捗を兼ねたものがあれば、単に主人公と交流を深め合う為のものもあってこちらはキャラの深掘りをするのに楽しめるでしょう。

これを通してストーリーとは関係ないキャラの人間味のある一面、リアルにおける人物像や立ち振る舞いが少しずつ見えて来ます。

f:id:RH6754:20220925022243j:image

 

公式チャットなんかも実装されています。現実ので言えばこれは2ちゃんねるっぽい雰囲気で、The Worldのユーザーが色んな形で交流する様をリアルに再現しています。

レスを返すことも出来、このやり取りの中で特定イベントの為のフラグを立てることも可能。広大なネットゲームの中でやり込みユーザーの間だけで発見した面白い仕様とか、独特のワクワク感がありました。

f:id:RH6754:20220925022420j:image

 

物語の特性上どうしてもネット世界のアクシデントって面に偏ってはいるんですが、仕様内の要素も悪くないと思います。

ぶっちゃけクエストは各個内容は薄いし少ないのですが、vol.3の「さらばメカ・グランディ」はいきなり濃い話で良い意味で驚きました。あとvol.4除いた全vol.通して最強の裏ボスが仕様内の大ボスなのは、開発がこの劇中ゲームをリスペクトしてる感じがあって良かったですね。

 

"PK(プレイヤーキラー)"と呼ばれる悪質ユーザーを、ゲーム中で二つ名付き賞金首として扱ってたりしてるのはどうかとは思いましたがw どうなってる運営の倫理観。

f:id:RH6754:20220925021856j:image

 

3つのワードを組み合わせて顕現する微妙に仕様が違うエリアが無数に存在するなど、ネトゲらしくユーザーが沼りそうなシステムも好きでした。これは確かにチャット欄が盛り上がるのも納得ですね。

f:id:RH6754:20220925022803j:image

 

全体的に、劇中ゲームとしての作り込みや納得感、あるある感は徹底していると思います。ゲームを体験するゲームと言われると何だか変な感じですが、それだけに他のゲームには無い不思議な感覚を覚える世界観だと思います。

人との関わり合いで少しずつ変わって行く、ハセヲの成長物語

ゲームは元のPS2版が全3部作構成であり、それに伴って物語も3部作…というよりは3章構成という形を取っています。

vol.4がありますが、これは後日談の短編です。

 

前述したように軸となるのはネット世界の仕様外トラブルを巡る物語なのですが、何と言っても特筆すべきはその主人公の成長物語です。

 

主人公ハセヲのvol.1におけるファーストインプレッションは、一言でいえば最悪だと思います。とにかく他者を寄せ付けない攻撃的な性格で、目上には無礼だし優しく接してくれる人にもかなり手酷く拒絶する捻じ曲がった奴です。

PKK(PKキラー)のハセヲ」「死の恐怖」といった異名で知られThe World全域で畏怖される嫌われ者で、おおよそ主人公らしさは皆無。一応そんなことを繰り返すのにも性格の根源にも理由はあるのですが、その捻くれた性格から強い不快感を覚えるプレイヤーは多いと思います。

f:id:RH6754:20230324122836j:image

 

しかし、彼はThe Worldを取り巻く事件を通して仲間と交流を繰り返す内に少しずつ変わって行きます。

仲間を大切にすること、仲間の想いを尊重すること、強大な力を正しく扱うこと、誰かと共感し合うこと。初めこそ他者を拒絶していたハセヲですが、そう言ったものを仲間との交流を通して学んで行く。

vol.3の後半になると、もう滅茶苦茶仲間思いの熱い奴且つ皆を引っ張るザ・主人公になってます。ここまで序盤と終盤で人格も印象も変化する主人公は中々に珍しいくらいです。

 

他者を拒絶する主人公が仲間との交流を経てちょっとずつ変わって行くのは、SIGNのプロットと同じだと思いました。あちらの主人公はハセヲとはまた別ベクトルのコミュ障ですが。

 

ネトゲ内で誰からも嫌われ自らも心を閉ざしていた「死の恐怖」が、主人公としてヒーローとして覚醒して行く熱い成長物語です。中盤とある仲間が離脱しようとするのですが、それを必死で説得し食い止めようとする姿に彼の大きな変化を感じ感慨深くなりました。

キャラに感情移入をするのではなく、見守るような気持ちで物事を俯瞰して見る方がこの物語は楽しめると思います。

f:id:RH6754:20220925021626j:image

 

また、そんな彼と仲間達の完成された絆を証明するかの様にクリア後は各キャラとの友情イベントがあります。女性キャラとは結婚イベント

これをやるには各キャラ"好意度"と呼ばれるハートマークのメーターをMAXにしなきゃいけません。"連撃"やアイテムプレゼント、面倒ならvol.3クリア後の"ゴッドチムチム"解禁まで後回しにして仲間と仲良くなりまくりましょう。

f:id:RH6754:20220925021322j:image

高クオリティなアニメムービー

本作の開発は最近で言えば『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』で知られるサイバーコネクトツー(CC2)。

鬼滅は圧倒的なアニメ絵の再現度とグラフィックで話題になった作品ですが、本作のムービーのクオリティにはその前身・一端が見られます。当時のアニメ系RPGにしては相当頑張ってるんではないでしょうか。

 

バトルはド派手でカメラアングルも秀逸で、何よりキャラの表情が良いですね。

感情豊かで、この頃からCC2のアニメに対する強いリスペクトと向上心が見えます。

f:id:RH6754:20230322010443j:image

f:id:RH6754:20230322010447j:image

 

またアニメ繋がりではありますが、本作の前日譚的位置付けで『.hack//Roots』というアニメがあります。

ストーリーの幾つかはこれを見てる前提なのがあるので、より楽しみたい方はこのアニメも見ると良いのではないでしょうか。

気になった所

良くも悪くもストーリー性に偏った作り

まあこういうゲームは過去にも当ブログで幾つかレビューはしてるんですが、本作も例に漏れずと言った所があります。

元がPS2のレトロゲー(vol.1が16年前)なのである程度は目は瞑るべきなのかもしれませんが、それを加味しても厳しい面が少々ある気がしました。

 

バトルはARPGなんですが、仲間との好意度の兼ね合いもあって連打→連撃→連打→連撃…のワンパターンになりがちでした。完全アタッカーのハセヲ以外使用出来ないので、ロールプレイも出来ないですし。

レベルも驚く程モリモリ上がるので、育成の過程で味方がインフレしがち。折角育成要素は豊富なのに、それを披露する場所が限られてしまうのは勿体無いです。

 

それと個人的に、バトルフェイズへの移行がちょっとなと思いました。

フィールドは広く無いのに、微妙に広い雑魚の索敵範囲に入ると強制的にバトルに引き摺り込まれます。狭い場所だとこれがかなりきつく、面倒だなと思っても、数量の限られるアイテムを使いでもしない限り逃げられません。

一応シームレスなシンボルエンカウントですが、これだと却ってストレスでシステムの良さを殺してしまってる気がします。

f:id:RH6754:20220925023928j:image

 

主人公の特殊能力から成る"憑神バトル"も、いきなり『ANUBIS』みたいな3Dシューティングになって何だかなぁと。

仕様外バトルという設定上経験値も入らないし、イベントバトル兼ミニゲーム感が否めません。演出は派手なので好きですが。

f:id:RH6754:20220925023345j:image

 

もっとも、難易度はかなり低いです。

バトルはある程度は割り切って、基本的にはストーリーと劇中ゲームの雰囲気を楽しむものとして捉えればいいでしょう。

まとめ

f:id:RH6754:20220924041834j:image

システム面は気になる所がありますが、正に「歩くような速さで」少しずつ人として成長して行くハセヲの物語は実に見応えがありました。

特にエンディングの清涼感は素晴らしく、長い物語の締め括りに流れるLieNさんの歌はプレイ後も胸に染み渡って離れません。SIGNもそうですが、本当に音楽というものに恵まれたシリーズです。

後の鬼滅やJOJOのゲームにも繋がるCC2の優れたアニメ映像・演出も必見で、今見ても古臭さは薄いと感じました。

 

またこれはゲーム内容そのものとは関係ありませんが、奇跡体験!アンビリバボーで放送された感動エピソードでも有名な作品です。

こちらは本作のファン非ファン関係なく目を通して欲しい、本当に素晴らしいエピソードです。このお話に胸を打たれたのをきっかけにし、本作を手に取ってみるのも全然良いと思います。

『幻想少女大戦 DREAM OF THE STRAY DREAMER』レビュー

今回のレビューはこちらです。

有志による幅広い二次創作展開で知られる、ZUN氏による和製インディーズ『東方Project』。

本作は同人サークル『さんぼん堂』による数ある東方二次ゲームの一つで、SwitchでDL可能な東方キャラによる本格SRPGとなります。

 

SRPGは不得手で東方はPS4の『東方神秘録』しかプレイ歴が無い自分ですが、Twitterのフォロワーさんからお勧め頂きプレイすることとなりました。

 

この度、外伝と周回限定含め、全てのシナリオをクリアしました。それに伴いシナリオチャートは全部埋めてます

ここまでのプレイ時間は合計約74時間くらい。

f:id:RH6754:20220911204312j:image

 

以下、レビュー。

良かった所

激アツ且つ、東方の世界観が良く理解出来るストーリー

二次創作ということもあり、余りストーリー性なんかは期待してませんでした。典型的なキャラゲーの雰囲気で、可愛い女の子がわちゃわちゃしてるくらいだろうなー、と。

 

ですが、その考えは予想の遥か上を振り切る方向で裏切られました。

一言で言えばとにかく王道で熱いです。テキストの質がかなり高く台詞回しが秀逸で、同人作品かつ二次創作でありながらクオリティは上質な商業RPGのそれに匹敵すると思います。

f:id:RH6754:20220911215314j:image

 

基本的な流れは、様々な妖怪と人が住まう異世界"幻想郷"で起きた異変やトラブルに、霊夢魔理沙が仲間達と共に立ち向かうというもの。

レミリア率いる"紅魔館"や東風谷早苗を筆頭とする"守矢神社"など。その核には常に敵勢力の存在が在り、霊夢達は彼女達と戦い勝利し、やがて分かり合うことで東方の様々なキャラクターが自軍入りして行きます。

そんなこんなで合流し合った個性的な仲間同士の友情描写は素晴らしいです。妖怪と人が同じ地で分け隔て無く関わり合い、種族では無く「個」として交流する魅力的な世界がよく描けています。

f:id:RH6754:20220912064350j:image

 

敵だった頃のキャラも霊夢達と相対する者として確固たる信念を持ち、それがバチバチにぶつかり合って舌戦を交わす様が本当に熱いです。

f:id:RH6754:20220912045010j:imagef:id:RH6754:20220912045025j:image

 

中には特定キャラ達の関係性や人物像だけにフォーカスを当てたエピソードも数多くあります。

こちらも本作のゲーム性ならではな演出で盛り上げてくれるので、どれも非常に印象に残ります。この演出は回を追うごとに強化されるので、その点でも感動出来ました。

f:id:RH6754:20220912045701j:image

 

CVは無い、同じSRPGならFEの様な支援会話システムも無い。

それなのにここまで魅力的なキャラと燃える展開が連続したのは、今作が二次創作ゆえの製作側の熱量とも言えます。東方が好きという人も大して知らないという人も、等しくこの愛の大きさは伝わるのでは無いでしょうか。

 

人妖様々にそれぞれ独自の価値観や思想、矜持や目的を抱き、対立したり支え合ったりしながら活き活きとこの世界に根付いてると感じました。総勢70名超えというキャラ数でありながら、印象の薄いキャラが一人もいません。

表現技法が限られてる分、少年漫画やアニメでも見てるかの様に頭の中でキャラが動きまくったので驚きでしたね。

 

また少数ではありますが幻想少女大戦オリジナルキャラも存在します。

これらのキャラも大変よく出来ており、登場は遅めですがその存在感と魅力共に東方本編のキャラに全く負けていないと感じました。寧ろ本作限定キャラで、他の作品には一切登場出来ないというのが勿体無いと思うほど。

 

中でも終盤辺りの展開は最近やったゲームの中でもトップクラスに燃えました。

今まで共に戦ってきた仲間達との絆や尚も敵対する強大な勢力との信念のぶつかり合いという、本作の総決算かつ集大成で相当に盛り上がります。この辺りは話に引き込まれ過ぎて、本当にやめ時を失う程熱中してました。

f:id:RH6754:20220912050216j:image

 

それでも一番個人的にポイントが高いのは、本作に登場する勢力はほぼ霊夢達とは初対面という所です。

本作は原作ストーリーの複数をSRPGとしてアレンジし、一つに纏めた物だそうです。風見幽香の様な一部の例外を除けば、殆どのキャラが霊夢達との関わり合いのオリジンという形を取っています。

 

これは自分には非常に有り難かったです。自分が過去にやったのは神秘録だけで、これに出てないのは名前とキャラデザは知ってるけど…って感じばっかりだったので。

中でも神秘録で特にお気に入りだった藤原妹紅が、そういう形で登場するのがとても嬉しかったです。しっかりストーリー上の見せ場もあって、より好きなキャラになりました。

f:id:RH6754:20220912052426j:image

 

幻想郷とはどのような場所か、弾幕とはこの世界で戦う手段以外に、彼女達にとってどんな意味を持つのか。そういった東方の根幹を成す要素も、ストーリー上でゆっくりと紐解かれ語られます。

東方を知らない人から東方を好きな人まで。本作のストーリーはどの様な層も楽しめて、幻想郷と幻想郷に生きるキャラを好きになるには十分過ぎる完成度だと思います。

本作をプレイし終わった頃には、どこかフワッとしたイメージの東方キャラ達にしっかりと地に足が着いた感覚がありました。ゲームが終わった頃には軽く東方ロスに陥った程でした。

ゲーム4本分+αのえげつないボリューム

本作を二次創作同人の規模を超えてると思わせる要素に、ストーリー以上にその圧倒的なボリュームがあります。

 

何と本編一周だけで全77話。最初に霊夢/魔理沙でルート選択があり、片方限定のシナリオや外伝、周回での分岐限定のシナリオを合わせるとその分量は100話超え

これ程の超大作になったのは本作の製作に至るまでの経緯にあり、元々はPCゲームの4部作だったのを本作で一つに合体させたからです。先に述べた演出が話数を追うごとに強化されるのはこれが理由でもあります。

 

その話数に比例してとにかく全ての要素が物量の嵐です。BGMは粒揃いの良曲ばかりなのに200曲を超え、70名以上いるキャラは全ての技に気合の入った専用アニメーションがあります。

必殺技になると、各個人に専用カットインも挿入されるという贅沢っぷり。中には動くのもあり、キャラゲーとしては文句無しの作りです。

f:id:RH6754:20220912071647j:image

f:id:RH6754:20220912063222j:image

 

ライブラリーも滅茶苦茶気合が入っており、音楽はただ曲を再生するだけじゃなく作曲者や編曲者の解説付き。キャラ図鑑に至っては原作におけるキャラの立ち回りも超細かく解説してくれてます。

特に後者はアメコミの解説書みたいな感じで、原作未プレイの方には読み物としても楽しめるのでは無いでしょうか。

f:id:RH6754:20220912062538j:image
f:id:RH6754:20220912062541j:image

 

中でも驚いたのは、戦闘開始直前や戦闘中の専用台詞の豊富さです。特定のシチュエーションかつ特定のキャラ同士の会話で発生する物が非常に多い。

これを狙って出すのも醍醐味の一つで、ストーリー含めたテキスト総量となると分厚い本一冊作れるんじゃ無いかってくらい量があると思います。二周目限定キャラにも専用会話が用意されてるという拘りっぷりで、これをやり込めば底無し沼に嵌ること間違い無しです。

f:id:RH6754:20220912070852j:image

f:id:RH6754:20220912072437p:image

 

この4部作が完成するだけでも実に8年という時間を掛けており、同人ゲームとは思えない物量の多さはその歳月に比例しています。

難易度ノーマルでもシナリオを全踏破するのに74時間掛かります。全てをしゃぶり尽くそうとするとどれ程の物になるのか想像もつきません。

スペルカードシステムで緊張感のある戦闘

本作は人気SRPGスーパーロボット大戦』のパロディという側面があるそうですが、それに関してはごめんなさい全く語れません。スパロボ全くしたこと無いので。

 

あまり得意なジャンルでは無いので初心者向けのノーマルで遊んだのですが、基本はオーソドックスなSRPGでストレス無く楽しめました。

自分のようなSRPG苦手勢には好きなキャラを育てて贔屓強化し、精神スキルでバフを積んで大ダメージを出すって遊びが楽しかったです。特に魔理沙は固有スキルでもバフを積んで特大ダメージが出せるので、結構脳汁が出ましたね。

f:id:RH6754:20220912082404j:image

 

信仰ポイントがターンごとに貯まって随時強化される早苗。各ユニットは弱いけど、合体すれば3ユニット分の個性が1ユニットとして使用可能な強キャラと化す三妖精とプリズムリバー三姉妹など。

キャラの特徴に合ったユニークな個性を持ったユニットが多く、キャラゲーらしい贔屓育成にも最適です。

f:id:RH6754:20220912082301j:image

 

また戦闘においてはボス戦がかなり歯応えのあるゲームバランスだと思います。

途中からボスの体力を0にするとボスが"スペルカード"という奥義を出して復活して来るようになります。これを発動するとボスが全回復し、色付きフィールドの上に立った自機にデバフが掛かったり、強力なMAP攻撃に巻き込まれたりします。

f:id:RH6754:20220912082620j:image

 

これが中々に凶悪な仕様の奴が多く、そこに立つだけで体力が問答無用で奪われたり射程技を無効化されたりなどして苦戦を強いられます。"霊撃"という全ユニット共通の攻撃で限定範囲で色付きを除去出来るのですが、数が限られるので何処で使うかが悩み所です。

倒した→スペカ→倒した→スペカで長期戦に持ち込まれるパターンが後半増えるので、ノーマルでも中々に油断なりません。一気にやられるというよりはジワジワと追い詰められる感じに近く、どの難易度でもかなり緊張感のあるバトルを楽しめると思います。

気になった所

チャプターセレクトが欲しい

ゲームは全編通して一本道であり、少々融通が効きません。

各シナリオの特殊条件ボーナスなど取り逃がした要素があれば泣く泣く一からやり直すしか無く、この辺は少々不便に思いました。

 

イベントにも力を入れてる分クリア後も何度か見たいシナリオが幾つかあるので、勿体無いと感じました。

クリア後は周回と同時にチャプターセレクトがあれば良かったのではないかなと思いましたね。話数が膨大なのもあって、プレイしてて尚更欲しくなってしまいました。

まとめ

f:id:RH6754:20220912082811j:image

本作はSRPGというゲーム性を軸に、ファン視点での東方世界の魅力が誰にでも伝わる傑作と言って良いと思います。多様性のある素晴らしい世界観に個性的なキャラと、東方がここまで長く深く愛される理由がよく分かるゲームです。

東方とか抜きにしても一つのRPGとして非常に良く出来ており、久々にクリア後に強い喪失感を覚えました。

 

ゆっくり実況やニコニコのネタ動画など、そういった要素で東方はネットを利用してたら多くの人が見る機会に巡り遭うコンテンツです。

全然よく分かんないけどキャラとか音楽だけ知ってるって人は他のゲームよりも相当いると思います。それをきっかけにして、ゲームにもちょっと興味があるって人もいるのではないでしょうか。

 

本作はそういった人にも、二次創作ではありますが東方というコンテンツそのものの入門書として自信を持ってお勧め出来る一作だと思います。

弾幕STGや格ゲーなど、ジャンル的に本編にどうしても手が出ないって方は無理に本編に拘らず、本作をまず手に取っては如何でしょうか。

『ニーア オートマタ』レビュー

今回遊んだゲームはこれ。

知る人ぞ知る鬼才、ヨコオタロウ氏が手掛ける『ニーア』シリーズ第2作目。開発は『ベヨネッタ』で知られるプラチナゲームズ

独特の世界観と人類の願いを叶えた極上のお尻で世界中を魅了した、PS4世代を代表するヒット作の一つです。

 

今年はスイッチにDLC入りの完全版『ニーア オートマタ ジ・エンド・オブ・ザ・ヨルハ エディション』が移植されますね。これを機に触れる人は多いのではないでしょうか。

 

この度、アンドロイドと機械生命体のサブクエストをそれぞれ100%クリア。その上でEエンドまで遊びました

プレイ時間は大体40時間くらい。ゲームの仕様上、Eエンドまでの正確なプレイ時間は不明です。すみません。

一応各種類のクエストを100%クリアしたプレイレコードを貼っておきます。

f:id:RH6754:20220829050828j:image

 

以下、レビュー。

良かった所

救いようの無い世界観

今作のディレクター兼シナリオライターであるヨコオ氏は代表作である『ドラッグ・オン・ドラグーン』を始め、陰鬱な世界観と救われないストーリー、複数に分かれたエンディングの独特な構成で知られます。

その作家性は本作でも遺憾なく発揮され、各エンドの内訳を大雑把に解説すると以下のような感じ。

 

Aエンド→第一部完

Bエンド→第一部の別視点

Cエンド→第二部完(終盤の選択で片方を選んだ場合)

Dエンド→Cエンドのアナザーエンド

Eエンド→特殊スタッフロール

 

5周もゲームやらせるの?と心配に思われるかもしれませんがご心配なく。

第一部はそもそもそんなに長くないし、BはAをクリアすれば比較的あっさりクリア可能です。CとDはそれぞれ第一部完から話が続くしCエンドを達成すれば細やかなチャプターセレクトを選べるので、Cをクリアすれば直ぐにDはクリア可能。

EはCとDのエンディングを見れば速攻でそのルートに進むしミニゲームのようなものなので、周回のストレスはほぼ無いと言っていいでしょう。

f:id:RH6754:20220829134200j:image

 

本筋であるA~E以外にもF~Zエンドが存在。

これはおまけみたいなもの。本筋の物語から外れて単独行動を取ったりすれば回収可能で、やり込みたい方はネットでやり方を調べて回収しましょう。

f:id:RH6754:20220829131023j:image

 

そして、ストーリーそのものの評価に移ります。

大筋の軸は、アンドロイドと機械の荒廃した地球における代理戦争。地上は数千年前宇宙から侵攻して来たエイリアンによって殲滅されており、現在はそのエイリアンが使用した生体兵器"機械生命体"が支配しています。

人類は機械生命体の脅威から逃れる為に月へと移住。その代わり戦闘能力に特化したアンドロイド"ヨルハ"を創造して地上に残し、彼らは人類の為に地球を取り戻さんと長きに渡って機械生命体と戦い続けています。

 

ヨコオ氏の作風もあって、何というか鬱ってよりは虚無感が凄いです。あれこれと考えても、結局は「全ての存在は滅びるようにデザインされている」というゲーム開始直後の2Bの独白に何もかも終結する感じ。

何かがきっかけで心が壊れた人の描写が特に秀逸で、全ては空虚ゆえに台詞の一つ一つにもかなり訴え掛けて来るものがある。

アンドロイドや機械の心という古典的なSFのテーマでありながら、ここまで重く残酷で美しいシナリオを書けるのはヨコオ氏ならではじゃないでしょうか。この心にぽっかり穴が空くような感覚は確かに癖になります。

 

本作を象徴する存在として知られる主人公"2B"より、もう一人の主人公である"9S"の方が個人的には強烈でした。

声優は今でこそ鬼滅の炭次郎で広く知られる花江夏樹氏。氏の優れた演技力もあって序盤の飄々とした感じから終盤の心身ともに壊れて行く様で、本作を真に象徴する非常にインパクトの強いキャラだったと思います。

f:id:RH6754:20220829132936j:image

 

そんな空虚を絵に描いた様な世界を、プレイヤーはオープンワールドでじっくりと堪能することとなります。

この雰囲気作りも非常に気合が入っています。特に遊園地は、人類が消え去り機械生命体が支配した地上という本作の異様な世界観の最大公約と言えるでしょう。ここはBGMも良曲揃いの中でも特に良く、癖になる人は多そうです。

f:id:RH6754:20220829134002j:image

 

鬱耐性は少々必要ながら、刺さる人には無限にぶっ刺さるヨコオワールド。

ここまで世界がこのゲームに熱狂した理由は、この全てが「空虚」で要約出来る世界観とストーリーにあると言っても過言ではないと思います。

やり込み甲斐のあるサブクエス

サブクエは大体60程ですが、そのどれもが非常に拘っていました。

プレイヤーキャラはそのクエストによってボイス付きで専用の台詞を喋るし、一つ一つを消化して行くと後の展開の伏線にもなる様なクエストもあって面白かったですね。

 

中でも機械生命体のクエストは世界観の掘り下げの為にもプレイは推奨されると思います。

この世界、機械生命体が地上を支配してから余りにも時が経ち過ぎたのです。無知で無感情な機械生命体に、旧世界の文明跡地から知識と心を学ばせ、個々の人格果ては多様性さえ与えるには十分でした。

 

最初こそ、付け焼刃の知識から「人間の真似事」をする機械生命体に不気味さや気持ち悪さを覚えることでしょう。殲滅せねばと。

ですが、それはあくまでもこの世界を生きる機械生命体の一部に過ぎません。本当に色んなヤツがいるのです。

 

アンドロイドを発見次第襲って来る奴がいれば、その逆で争いを望まず共存と話し合いを第一に考える奴がいる。無論そんな楽観的な平和主義者を良しとしない奴もいるから、同族でも容赦なく襲って来る奴らがいる。

スポーツマンで主人公に正々堂々な戦いを挑んで来る奴、家族の為を考えて一人で無茶してしまう奴、戦う以外の生き甲斐を見つけてる奴…。彼らは単なる敵ではなく、まるで在りし日のヒトのように各々個性を持ち、この地上に根付きつつあるのがメインストーリーだけならずサブクエを通して理解出来ることでしょう。

f:id:RH6754:20220829134628p:image

 

彼らは殺されるべき敵であり、その言葉一つ一つはただの人間の不出来な真似事で何の意味も価値もない。アンドロイドの存在意義ともいえるその前提に、2Bや9Sはおろかプレイヤーでさえ揺さぶりを掛けられてしまうのです。

プレイしてて、段々機械生命体に感情移入し愛着を持って行く自分がちょっと怖かったです。中には半端に人間であるがゆえのコミカルな言動やネタイベントもあって、陰鬱な世界の怨敵でありながら彼らは癒しとしても機能しています。

f:id:RH6754:20220829131140j:image

 

機械生命体は本当に敵なのか。アンドロイドの存在意義は、本当に彼らを殲滅し人類の英華を地球に取り戻すことなのか。

正義とは何か、正義は何処にあるのか、正義は存在するのか。

これから遊ばれる方にはサブクエを消化しながらたっぷりと疑問を感じつつ、最後までプレイしてその真相をその目で確かめて欲しいです。

プラチナ仕込みの滑らかなアクション

本作の開発はベヨネッタで知られるあのプラチナゲームズで、彼らが手掛けてるだけあってモーションのカッコよさや爽快感は一級品。どんな動きをするにせよ兎に角滑らかで、特に2Bのモーションは色んな意味で絵になります。

f:id:RH6754:20220829131208j:image

(注釈 : 公に開示するには不適切と判断し画像を縮小。)

(推奨 : 駆り立てられる好奇心を抑えられないのであれば画像をタップ。)

(疑問 : 人類文明における身体的魅力への執念と願望。)

 

避ける→攻撃→避ける→…の基本的にはこの繰り返しなので少々大味な感じもありましたが、シナリオと雰囲気を楽しみたい方にとっては難易度は控えめで有難いことでしょう。

どうしてもクリア出来ないって方の為にオートバトルも用意されており、あくまでも見栄え重視な戦闘システムで基本的には誰でもクリア出来ると思います。

気になった所

シューティング要素

兎に角随所で謎のシューティングゲーム要素が入って来る。

 

空中戦や、ハッキングによる不具合除去。それらの行動を行うにはこれをやらなきゃいけない訳ですがまさかの弾幕シューティング仕様であり、難易度ノーマルでもかなり難しくてはっきり言ってちょっと苦痛でした。

特に二周目のBエンドルートでは頻繁にこれをやらされるのがかなりキツい。ハッキングは画面もチープなので尚のこと辛かったです。

f:id:RH6754:20220829132014j:image

f:id:RH6754:20220829133223j:image

 

開発もこれは分かっているのか、ハッキングに限ればオートバトルにすると被ダメなし・自動照準と相当楽になります。

ゆえに、何もこれに関してはノーマル以上で意地張ってクリアする必要は無いと考えます。

クリア出来ない、めんどくさいと感じれば遠慮なく難易度を下げてオートバトルを使うべきです。

 

詳しくは言えませんが正直、ラストのラストにまで出張って来るのは辟易としました。こちらもまあ救済措置があるので何とかなりますが、オフライン勢はまず詰みでしょうね…。

まとめ

f:id:RH6754:20220829133535j:image

全体を通し、とにかくゲームというよりはこれ一本でヨコオ氏の頭の中にあるニーアオートマタという「世界」って表現が正しいと思いました。非常に作家性の強い作品だと思います。

 

とはいえゲームを一つの世界として捉えた物としては随一の完成度を誇っていることも確かで、UIはじめシステムとストーリーの擦り合わせに関しては一種病的と言える程の拘りが見えます。

 

「着いて来れる奴だけ着いて来い!」という作品ではありますが、2022年8月時点で売上はなんと650万本以上。

ギンギンに尖っているが故にその魅力は圧倒的な程に唯一無二と言うべきでしょう。人を選ぶ作品ながら、これ程多くの人が言葉通り着いて来たのも納得出来るパワーを今作からは感じました。

『ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて S』レビュー

今回プレイしたゲームはこれ。

知らない人はいない国民的RPGドラゴンクエスト』シリーズナンバリング11作目。スイッチで発売された完全版『DQ11S』のPS4移植版です。

 

ドラクエ、ちゃんとプレイしたのは実はこれが初めてです。

日本人なのに今までこのシリーズにはしっかりと触れておらず、友人の誘いで初めてちゃんとシリーズに手を出すこととなりました。

 

この度、時渡りの迷宮以外のサブクエとクリア後世界のイベントを全てクリア。その上で裏ボスまで倒しました

ここまでのプレイ時間は約79時間

f:id:RH6754:20220823223152j:image

 

以下、レビュー。

良かった所

さくせんシステムが神

はじめに言っておくと、自分はこの手のコマンド系RPGが結構苦手です。苦手というか、基本的にポケモン以外は意図的に敬遠してたと言うべきかもしれません。

レベル上げとかでいちいち技選んで攻撃して…ってのが面倒くさかったんですよね。ポケモンポケモンだからってことで割り切れたんですが、正直ダルいとは感じてました。

 

ですが、今作はそんな自分でも全くストレスなくレベル上げ作業をこなすことが出来ました。

ファンにとっては伝統のシステムみたいだし何を今更って感じかもしれませんが、これはドラクエ初心者ゆえの感想と思ってください。"さくせん"というシステムがものぐさな自分には素晴らし過ぎると感じました。

f:id:RH6754:20220824153650j:image

 

普通にコマンドバトルとしてプレイヤーにキャラの行動が委ねられる"めいれいさせろ"以外、各種の作戦の内容次第でAIに行動が委ねられるいわゆるオートバトルです。

あらゆる呪文や固有技を戦況ごとに程よく活用して模範的な動きをする"バッチリがんばれ"。効率よく短時間で敵を処理出来る技選びをする"ガンガンいこうぜ"。味方や自分が死なないことに最も配慮して行動するようになる"いのちをだいじに"、など。

作戦の種類が非常に豊富でありAIもかなり的確に動くので、オートバトルを活用すれば裏ボスまで殆どプレイヤーの介入なしでクリアも可能です。

 

特にレベル上げの雑魚狩りには"ガンガンいこうぜ"が本当に重宝しました。作戦を固定しておけば戦闘が始まって"たたかう"を押すだけで効率良く雑魚を掃除してくれます。

膨大な作業量が伴うRPGのレベル上げにおいてプレイヤーの仕事は雑魚とエンカウトして戦闘で○ボタンを押す、ただこれだけ。戦闘スピードを設定で"超はやい"にすれば驚く程サクサク雑魚戦がテンポ良く終わり、レベルが簡単に上がって行きました。

 

中には"メタルスライム"という倒せば莫大な経験値を得られる雑魚がいます。

"メタルキング"や"メタルハンド"など、出現率は低いですがこの系統の雑魚を効率よく狩れるようになればレベル99ですらあっという間です。

f:id:RH6754:20220824143001j:image

 

何やかんやとドラクエにはシビアなイメージを持っていたので、自分みたいなタイプの人にも一切ストレスを与えない超親切設計には非常に驚かされましたね。

恐らく、普段ゲームをやらないという方も全く問題なくプレイ出来ると思います。これ程までに長く広くドラクエが愛される理由というのが、このシステムのお陰で分かった気がしました。

 

ですが、前述したように余りにも便利ゆえに、レベルを上げさえすれば事実上の真ラスボスである裏ボスまでAIが処理してくれる程の高性能です。流石にやり込みのボスなんかはそう単純には行きませんでしたが…。

最後まで頼り過ぎてゲームを「遊ぶ」ということの意味に疑問を生じてしまったのも事実。これは自主性の問題なので、次ドラクエをやる時にはあまりAIに頼らないプレイをしたいと思いました。

分かりやすく丁寧で完成度の高いストーリー

ストーリーは全体を通して手堅く纏まっており、一つ一つのエピソードも非常に丁寧で完成度は高めだと思いました。

 

勇者の生まれ変わりである田舎育ちの主人公が大国の王に謁見と、導入はありがちな物ですがそこから展開は一転。中々脳に焼き付く演出で一気に物語に引き込み、仲間との出会いや旅を通して少しずつ真実や世界の全貌が紐解かれて行きます。

魔王との戦いのようにこの手のファンタジーのツボもしっかりと押さえていながら、RPGとしては少しショッキングな展開も。終盤まで展開が二転三転するのもあって、分かり易い王道でありながら最後まで飽きさせないストーリーでした。

 

道中訪れる各町のエピソードも秀逸で、中でも個人的にホムラの里の人食い火竜やナギムナー村の人魚伝説の話は結構お気に入りです。こういう敢えて報われない話は嫌いではありません。

グロッタの町も良かったですね。ああいう終わり方結構好きで、自分は少し泣いてしまいました。

f:id:RH6754:20220824143558j:image

 

仲間となるキャラクター達も大変魅力的で、どのキャラにも誰もが好感を持てるよう作られてると思います。

ゲーム開始画面の主人公含む7人+中盤以降加入の1人で計8人のパーティーなのですが、一人一人にしっかりとした個別エピソードやシナリオ上の見せ場や掘り下げが用意されています。不快感のあるキャラや存在感の薄いキャラは誰一人としていませんでした。

 

個人的にはシルビアが一番好きです。

オカマの旅芸人という奇抜なキャラだけど確固たる信念があり、最後までポジティブシンキングで一緒にいて凄く気持ちの良いキャラでした。

f:id:RH6754:20220824152533j:image

 

魅力的なキャラに最後まで飽きさせない長大で王道な物語構成。RPGのストーリーとして、完成度はベテランの手腕を感じられる程に高い水準にあると言えるでしょう。

クリア後からクリア後のその先までボリュームたっぷり

ストーリーだけでもそれなりのボリュームですが、寄り道やオマケ要素も程良く豊富でやり込めばかなり長く遊べます。

全編通してロトゼタシア大陸には60程のサブクエがあり、その他にも"時渡りの迷宮"という場所で過去ナンバリングの世界を舞台にしたサブクエを遊ぶことが出来ます。グラフィックも昔の感じを意識しており、これはファンにとっては堪らないのではないでしょうか。

f:id:RH6754:20220824144527j:image

 

ストーリーはクリア後も続いて、その後は裏ボスを倒すことが目標となります。そこではかなり多くのサブイベントが解放され、どの内容も濃くて印象に残り易いものが多かったですね。

この辺で戦うボスキャラはクリア後なだけあってかなり手強く、対策が必須です。

 

"ドゥルダの試練"のように戦闘好きは歯応えのあるサブイベも用意されており、エンドコンテンツとして楽しめるのではないかと。

この辺のサブイベ消化は何となく『ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド』の感じを彷彿とさせました。ラスボスだけいつでも挑めるよう配置してあとは何をしても自由という感じが似てる気がします。

気になった所

所々古臭さは目につく

シリーズの長い歴史と様式美を重んじてる部分が見られ、そこが少し不便に作用してると感じる点はありました。

 

個人的にはUIデザインです。

過去作をざっと見るとシリーズの伝統なのかもしれませんが、ちょっとシンプル過ぎるというか、淡白でそれゆえに見にくいという印象を受けます。もう少しカラフルでも良かった気はしました。

f:id:RH6754:20220824153809j:image

 

あと、セーブがフィールドに置いてある女神像や町中の教会任せで任意には出来ない(オートセーブはあり)、キャンプでパーティー全回復に至るまでのテンポがちょっと悪いとかも気になりましたかね。

 

その様に所々昔っぽい感じは気になるものの、特別この作品の価値を下げてる訳では全くありません。

全体的にはRPGの昔ながらの良さを愚直に洗練した傑作であり、シナリオでもシステムでも欠点らしい欠点はほぼ無いと思います。

まとめ

f:id:RH6754:20220823223240j:image

始めてちゃんと遊んだドラクエで期待半分でしたが、個人的にはやり込みも含めて非常に楽しめました。

やっぱりキャラとストーリーが本当に素晴らしいし、何よりも間口が広くてここまでドラクエが長く愛されて来たのが本作でよく分かりました。

 

ただヌルゲー仕様に頼り過ぎた感じがあるので、次ドラクエをやる時はしっかりと歯応えのある遊びが出来るようにしたいです。全体的に王道を突き詰め、その結果一種の芸術にまで昇華された傑作だと感じました。

『ストレイ』レビュー

久々の2022年最新作を紹介します。

インディーズのゲームですね。猫ゲーと言って一部で話題になったりしてた、リアルな猫が主人公のADVです。

 

インディーズですが、開発期間は実に7年。開発スタジオでは人よりも猫が多いってくらい、猫好きスタッフだけで製作されたのだとか。

 

この度、B-12の記憶を全て思い出してバッジを全て集めてクリアしました

ここまでのプレイ時間は約8時間

f:id:RH6754:20220721010059j:image

 

以下、レビュー。

良かった所

猫好き開発陣による本気の猫

開発陣が全員大の猫好きというだけあって、猫の挙動は徹底的に研究されて作り込まれていると思います。

グラフィックのリアル感は勿論ですが歩き方や走り方。ちょっとした仕草に至るまで現実の猫を参考にして拘り抜いており、特に序盤の仲間猫と一緒にいるシーンは癒し成分MAX。猫の生態も相当に研究していると思われます。

それだけに高所から落下したりするシーンの感じもかなりリアルで、人が落ちるのとはまた違う痛々しさがあると思いました。その後の若干足を引きずってら感じもまた生々しいです。

 

びっくりして思いっきり後ろジャンプしたり、ふわふわした場所で体を丸めたり。愛らしい一面が沢山でスタッフの猫愛が伝わる様な、猫好きには堪らないスクショ映えはほぼ全編通して存在すると思います。

f:id:RH6754:20220721195952j:image

 

また、ゲームなので猫が外的要因で死ぬ様なシーンも普通にあります。

でも血が出たりとかそういうのは無く、ただ無傷で横になって倒れるだけなので余りショッキングには思いませんでした。

猫ならではのアクションや探索

オープンなフィールドを猫となって探索し、その世界の住民と交流したり世界の謎を解き明かして行くのが目的なのですが、人ではなく猫なのでその探索は独特です。

家の側面にある換気扇を軽々飛び越えたり、体の小ささを活かして狭い道も平気で通れたり、猫視点での大冒険をリアルに体感出来ます。

 

ジャンプは任意でしか出来なかったりして余り自由度はないのですが、身軽ゆえに基本的には何処にでも飛び移れるので余り気になりませんでした。

f:id:RH6754:20220721200133j:image

 

猫なのでドアを開けることは出来ません。

なので、ドアを引っ掻いて家の中の人に開けてもらう、という独特のアプローチも取れたりします。

f:id:RH6754:20220721201013j:image

 

こんな感じで、ちょっとしたイタズラも出来たりします。

人だったらアレな行為でも、猫なら何か許せてしまうのがニクいです。

f:id:RH6754:20220721195615j:image

かなりハードな実態を持つサイバーパンク世界

サイバーパンク世界を猫で探索、というのが今作のウリではありますが、その実態はポストアポカリプスです。トレーラーを見た時点ではAIロボが生活する異世界にでも猫が転移したのかと思ってましたが、実際は猫が元いた世界も含め人類が完全に死滅した後の世界でした。

独特の容姿を持つロボ達は独自の言語とコミュニティを得て、ヒト亡き地にて彼らなりの文化・文明を築き上げています。

f:id:RH6754:20220721201342j:image

 

彼らは典型的なロボットだけど、それぞれにちゃんと確固たる人格と個性があるのが良かったです。仕事をサボって上司に怒られたり、大切な人と再会してハグをしたり、見た目が違うだけで仕草や行動は完全に人間のそれ。

猫だけではなく、この世界のロボット達の生活感や気さくさ、不思議な人間味をじっくり堪能出来るのも今作の魅力となっています。

f:id:RH6754:20220721200850j:image

 

開発の"BlueTwelve Studio"はフランスの会社ですが、店の外観や屋内など一部はアジアっぽいのも面白い。色んな文化が混ざり合ってます。

こことか日本の居酒屋っぽいですよね。

f:id:RH6754:20220721201645j:image

 

また、ポストアポカリプスだけあってゲームを進めるとかなりエグいこの世界の裏側を見ることになります。

癒しゲーな表の姿に反してこちらはかなりというか相当に容赦のない絵面でした。特に地下水路はバイオハザードかと思う程のトラウマ級のグロさです。

猫の可愛さのギャップでこれはかなり面食らいました。

気になった所

マップが無い

シネマティックな雰囲気重視なのか、今作にはマップがありません。

街は全体的に薄暗くて微妙に複雑な地形だったのもあり、結構迷い易くて苦労しました。

 

最もそこまでボリュームはないサクッと終わるライトなADVなので、気にならない人は気にならないとは思いますが。

まとめ

f:id:RH6754:20220721202048j:image

等身大の猫が主人公という斬新な発想ながら、しっかりADVとして落とし込めている良作です。開発陣の猫への無限の愛が伝わるゲームだと思います。

 

プレイ時間は長くありませんでしたが、短いプレイ時間で主人公の猫やその世界観の作り込みをじっくりと楽しめた濃密な一作でした。

『クライスタ』レビュー

今回はこのゲームをレビュー。

2018年にフリューから発売されたアクションRPG。今年の2月にスイッチ版も発売されました。

 

前から気になってはいたんですけどね。やっと今回プレイすることが出来ました。

 

この度、シレンを全クリアし、死者回想録を全て埋めました

ここまでのプレイ時間は約42時間

f:id:RH6754:20220716223146j:image

 

以下、れびゅーだヨ!

良かった所

きゃらくたーでざいん、ぱーふぇくと!

今作のキャラクターデザイン担当はリウイチさんという方なんですが、この方のキャラデザはまー僕にクリーンヒットで刺さりまして。

普段その様な動機ではゲーム買わないんですが、多分ゲームにおいては人生で初めてのキャラデザ買いだと思います。

 

これパッケージのデザインなんですが、素晴らしいですよね。何年か前にファミ通本誌でこの絵が載ってるページを見て電流が走ったのをよく覚えてます。

結局ちゃんと買うのはそこから年月が経ったんですけどね。余り知名度の高くないゲームにも関わらずそれでも今まで忘れずに覚えてたのは、やっぱりこのキャラデザの力が大きいかなぁと。

可愛いのは大前提なんですけど、服装や装飾品のセンスにディティールの細かさ、色白で儚げな雰囲気まで全てがドンピシャでした。

 

上の画像は主人公の"幡田零(はただ れい)"なんですが、他のキャラクターも本当に良いです。

公式サイトから一例として、"メフィス"と"恵羽千(めぐみば せん)"の絵を転載します。f:id:RH6754:20220715014953p:imagef:id:RH6754:20220715015728j:image

 

ストーリー中にムービーなどは殆ど無く、立ち絵とテキストとボイスのみのいわゆる紙芝居形式メインで進むんですが、その立ち絵が良過ぎて全く苦になりませんでした。

プレイとやり込みのモチベーションを最後まで保てたのは、個人的にこのキャラデザの力もかなり大きいです。

f:id:RH6754:20220715021022j:image

 

今作が発売されてからもうじき四年が経ちますが、リウイチさんにはクライスタ以外の大きな仕事が未だに無いのがとても意外です。

ここまで高い画力とセンスがありながら、デザイナーの世界ってやっぱり厳しいですね…。

えんじょいでえきさいてぃんぐな仲間たちと、切なくて熱いすとーりーネ!

舞台は"辺獄"と呼ばれる死者の魂が集う異世界

引きこもりの少女"幡田零"とその妹"みらい"はある日突然辺獄へと引き摺り込まれ、異形が跋扈する異世界の激しい混乱の中で零はみらいを殺害してしまう。

悶える程の罪悪感に苛まれる零だが、そんな零の前に辺獄を管理する双子の悪魔"メフィス"と"フェレス"が現れる。

双子の悪魔は零に「七つの理念(イデア)を集めれば死んだ妹を"ヨミガエリ"させてやる」と嘯く。その代わり自分達と契約し、辺獄に巣食う自らヨミガエリをしようともがく有害な魂、"幽鬼"や"幽者"を悪魔に代わって退治する"代行者"になってもらう、と。

零は、これを迷わず承諾。

仲間との出会い、強敵との戦い、明かされる衝撃の真実…。みらいをヨミガエリさせる為の零と様々な目的で辺獄に引き摺り込まれた仲間達の、壮絶な戦いが幕を開ける——

 

と、物語はこんな感じです。殺してしまった妹を蘇らせる為の物語と、導入は比較的王道。

しかし、今作のテーマは「涙」。あまりネタバレは言えませんが、報われない展開やキャラクター達の重たい過去、特に終盤辺りはかなりキツい仲間同士のギスギスもあったりして全体的には重苦しい作風と言えると思います。

 

これは敢えてネタバレしますが、最近流行りの所謂「ループ展開」に途中で突入したりもします。

物語の三章分を合計三度繰り返すことになるのですが、物語の本番は寧ろここだと思います。この辺りに物語の種明かしやどんでん返しが詰まってるので、先が非常に気になるシナリオが続きます。

胃が痛くなる様な展開もかなり多いのですが、最終的には「涙を沢山流したからこそ」という感じの非常に熱い王道展開に。涙に意味を与えてあげて、という今作のキャッチフレーズはクリア後だからこそ重く響くものがありました。

f:id:RH6754:20220716231040j:image

 

キャラクターも全体的に好印象。

偏食ポテトウーマン仲間との触れ合いを通して少しずつ前向きになって行く零、見境なし抱きつきカラテウーマン大切な人を殺された復讐の為に突き進む小衣(こころ)さん、ラーメン大好き恵羽さん正義と情愛の間で揺れ動く千、辺獄史上最悪のバグキャラえんじょいでえきさいてぃんぐな幽鬼の777。

パーティーメンバーはこの四人ですが、それぞれしっかり掘り下げてくれるし見せ場もちゃんと用意されてます。

演技も言動も有り得ないほど憎たらしいメフィスとフェレスや真の敵と見せかけて…なアナムネシスなど、パーティーメンバー以外のサブキャラやヴィランも凄くキャラが立ってました。

 

基本的にキャラデザも相俟って全員好きなんですが、中でも777はお気に入り。

時に辛く重たい雰囲気を纏う様になる仲間達の中で常に"えんじょいでえきさいてぃんぐ"を崩さず、元気で健気な性格もあって特に好感が持てるキャラでした。

それに戦闘においては鬼神の如き強さを発揮する777ネキなので、必然的に頼る機会も多くてインパクトに残り易かったのもあります。

f:id:RH6754:20220716233653j:image

 

ストーリー、キャラクター。

キャラデザが優れているのは勿論、この二つも全く負けていない程素晴らしかったです。

怖いけど、綺麗で凄い世界だヨ!

初めから最後まで幽鬼や幽者の蔓延る辺獄を動き回る今作。

その辺獄の景色や雰囲気はこれまた非常に素晴らしく、独特の色合いもあってどのステージをどの角度から撮っても絵になると思います。

f:id:RH6754:20220716235052j:image

 

こんな感じに剣が円状に広がって空を覆ったり大剣が突き刺さってたり、かなりロマンを感じますよね。

f:id:RH6754:20220716235634j:image

 

エネミーの種類ははっきり言って少ないんですけど、どのエネミーも雰囲気に合った何とも言えないデザインだったりして個人的には好きです。

 

それからこの作品におけるエネミーの殆ど全て、元々は人間です。

彼らが落とす"死念"というアイテムを手に入れることでその生前の人生が記憶という形で垣間見えるのですが、作風が重いだけあって報われない鬱エピソードが多いのが特徴。記憶を全て埋めるには同じキャラを計三回倒すことが条件です。

ボスキャラでも三回倒せば、記憶という形でその人となりが見えたりします。

f:id:RH6754:20220717000422j:image

 

この様な雑魚ですら重たい設定を抱えたものが多いのですが、これらの設定の細かさも世界観に深みを与えてる要因になってると感じました。

また、一部ではかなり重要な裏設定がさりげなく載ってます。ストーリー中ですら語られない一部キャラの核心に迫る様な記憶もあったりして驚きました。

気になった所

ゲームプレイは大味

一応今作はアクションRPGですが、その点のクオリティはあまり高くないと感じました。

操作感は『無双シリーズ』に近く、連打による連続攻撃を主体にストレスの無い直感的な操作は可能です。ただ肝心のモーションがどうにも固くて、あまり見栄えは良いとは思えませんでした。

 

難易度も全編通して非常に低く、ボス含めどんな敵を相手するにせよゴリ押しが最も効率の良い戦い方って感じがあります。なので、よっぽどのゲーム下手でも無い限り最後まで苦労はしない気がしました。

複雑なシステムや操作とかも一切無いし、ユーザーライクと言えば聞こえは良いのですが、余りにもヌル過ぎてちょっと物足りませんでした。

死念を零が泣いて浄化し武器を手に入れる、というシステムはユニークだとは思いましたが…。

f:id:RH6754:20220716222859j:image

 

今作のメインはその世界観と完成度の高いストーリーであり、戦闘はそのアクセント程度に考えたらいいと思います。

まとめ

f:id:RH6754:20220716215920j:image

アクションRPGとして大味なのは無視出来ません。

ですが、やはりその優れたキャラデザと非常に凝った世界観、それらが紡ぎ出す素晴らしいストーリーはお金を出して体験しても全く損はありませんでした。

 

歯応えのあるゲームプレイより、完成度の高い物語をアニメ感覚でゲームとして楽しむ。そんな作品だと思います。

特にリウイチ先生には、今後も色んな仕事が有っても有り過ぎることは無い様に思えます。先生の更なる躍進と知名度の向上を心から願いたいですね。