『ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて S』レビュー
今回プレイしたゲームはこれ。
知らない人はいない国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズナンバリング11作目。スイッチで発売された完全版『DQ11S』のPS4移植版です。
ドラクエ、ちゃんとプレイしたのは実はこれが初めてです。
日本人なのに今までこのシリーズにはしっかりと触れておらず、友人の誘いで初めてちゃんとシリーズに手を出すこととなりました。
この度、時渡りの迷宮以外のサブクエとクリア後世界のイベントを全てクリア。その上で裏ボスまで倒しました。
ここまでのプレイ時間は約79時間。
以下、レビュー。
良かった所
さくせんシステムが神
はじめに言っておくと、自分はこの手のコマンド系RPGが結構苦手です。苦手というか、基本的にポケモン以外は意図的に敬遠してたと言うべきかもしれません。
レベル上げとかでいちいち技選んで攻撃して…ってのが面倒くさかったんですよね。ポケモンはポケモンだからってことで割り切れたんですが、正直ダルいとは感じてました。
ですが、今作はそんな自分でも全くストレスなくレベル上げ作業をこなすことが出来ました。
ファンにとっては伝統のシステムみたいだし何を今更って感じかもしれませんが、これはドラクエ初心者ゆえの感想と思ってください。"さくせん"というシステムがものぐさな自分には素晴らし過ぎると感じました。
普通にコマンドバトルとしてプレイヤーにキャラの行動が委ねられる"めいれいさせろ"以外、各種の作戦の内容次第でAIに行動が委ねられるいわゆるオートバトルです。
あらゆる呪文や固有技を戦況ごとに程よく活用して模範的な動きをする"バッチリがんばれ"。効率よく短時間で敵を処理出来る技選びをする"ガンガンいこうぜ"。味方や自分が死なないことに最も配慮して行動するようになる"いのちをだいじに"、など。
作戦の種類が非常に豊富でありAIもかなり的確に動くので、オートバトルを活用すれば裏ボスまで殆どプレイヤーの介入なしでクリアも可能です。
特にレベル上げの雑魚狩りには"ガンガンいこうぜ"が本当に重宝しました。作戦を固定しておけば戦闘が始まって"たたかう"を押すだけで効率良く雑魚を掃除してくれます。
膨大な作業量が伴うRPGのレベル上げにおいてプレイヤーの仕事は雑魚とエンカウトして戦闘で○ボタンを押す、ただこれだけ。戦闘スピードを設定で"超はやい"にすれば驚く程サクサク雑魚戦がテンポ良く終わり、レベルが簡単に上がって行きました。
中には"メタルスライム"という倒せば莫大な経験値を得られる雑魚がいます。
"メタルキング"や"メタルハンド"など、出現率は低いですがこの系統の雑魚を効率よく狩れるようになればレベル99ですらあっという間です。
何やかんやとドラクエにはシビアなイメージを持っていたので、自分みたいなタイプの人にも一切ストレスを与えない超親切設計には非常に驚かされましたね。
恐らく、普段ゲームをやらないという方も全く問題なくプレイ出来ると思います。これ程までに長く広くドラクエが愛される理由というのが、このシステムのお陰で分かった気がしました。
ですが、前述したように余りにも便利ゆえに、レベルを上げさえすれば事実上の真ラスボスである裏ボスまでAIが処理してくれる程の高性能です。流石にやり込みのボスなんかはそう単純には行きませんでしたが…。
最後まで頼り過ぎてゲームを「遊ぶ」ということの意味に疑問を生じてしまったのも事実。これは自主性の問題なので、次ドラクエをやる時にはあまりAIに頼らないプレイをしたいと思いました。
分かりやすく丁寧で完成度の高いストーリー
ストーリーは全体を通して手堅く纏まっており、一つ一つのエピソードも非常に丁寧で完成度は高めだと思いました。
勇者の生まれ変わりである田舎育ちの主人公が大国の王に謁見と、導入はありがちな物ですがそこから展開は一転。中々脳に焼き付く演出で一気に物語に引き込み、仲間との出会いや旅を通して少しずつ真実や世界の全貌が紐解かれて行きます。
魔王との戦いのようにこの手のファンタジーのツボもしっかりと押さえていながら、RPGとしては少しショッキングな展開も。終盤まで展開が二転三転するのもあって、分かり易い王道でありながら最後まで飽きさせないストーリーでした。
道中訪れる各町のエピソードも秀逸で、中でも個人的にホムラの里の人食い火竜やナギムナー村の人魚伝説の話は結構お気に入りです。こういう敢えて報われない話は嫌いではありません。
グロッタの町も良かったですね。ああいう終わり方結構好きで、自分は少し泣いてしまいました。
仲間となるキャラクター達も大変魅力的で、どのキャラにも誰もが好感を持てるよう作られてると思います。
ゲーム開始画面の主人公含む7人+中盤以降加入の1人で計8人のパーティーなのですが、一人一人にしっかりとした個別エピソードやシナリオ上の見せ場や掘り下げが用意されています。不快感のあるキャラや存在感の薄いキャラは誰一人としていませんでした。
個人的にはシルビアが一番好きです。
オカマの旅芸人という奇抜なキャラだけど確固たる信念があり、最後までポジティブシンキングで一緒にいて凄く気持ちの良いキャラでした。
魅力的なキャラに最後まで飽きさせない長大で王道な物語構成。RPGのストーリーとして、完成度はベテランの手腕を感じられる程に高い水準にあると言えるでしょう。
クリア後からクリア後のその先までボリュームたっぷり
ストーリーだけでもそれなりのボリュームですが、寄り道やオマケ要素も程良く豊富でやり込めばかなり長く遊べます。
全編通してロトゼタシア大陸には60程のサブクエがあり、その他にも"時渡りの迷宮"という場所で過去ナンバリングの世界を舞台にしたサブクエを遊ぶことが出来ます。グラフィックも昔の感じを意識しており、これはファンにとっては堪らないのではないでしょうか。
ストーリーはクリア後も続いて、その後は裏ボスを倒すことが目標となります。そこではかなり多くのサブイベントが解放され、どの内容も濃くて印象に残り易いものが多かったですね。
この辺で戦うボスキャラはクリア後なだけあってかなり手強く、対策が必須です。
"ドゥルダの試練"のように戦闘好きは歯応えのあるサブイベも用意されており、エンドコンテンツとして楽しめるのではないかと。
この辺のサブイベ消化は何となく『ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド』の感じを彷彿とさせました。ラスボスだけいつでも挑めるよう配置してあとは何をしても自由という感じが似てる気がします。
気になった所
所々古臭さは目につく
シリーズの長い歴史と様式美を重んじてる部分が見られ、そこが少し不便に作用してると感じる点はありました。
個人的にはUIデザインです。
過去作をざっと見るとシリーズの伝統なのかもしれませんが、ちょっとシンプル過ぎるというか、淡白でそれゆえに見にくいという印象を受けます。もう少しカラフルでも良かった気はしました。
あと、セーブがフィールドに置いてある女神像や町中の教会任せで任意には出来ない(オートセーブはあり)、キャンプでパーティー全回復に至るまでのテンポがちょっと悪いとかも気になりましたかね。
その様に所々昔っぽい感じは気になるものの、特別この作品の価値を下げてる訳では全くありません。
全体的にはRPGの昔ながらの良さを愚直に洗練した傑作であり、シナリオでもシステムでも欠点らしい欠点はほぼ無いと思います。
まとめ
始めてちゃんと遊んだドラクエで期待半分でしたが、個人的にはやり込みも含めて非常に楽しめました。
やっぱりキャラとストーリーが本当に素晴らしいし、何よりも間口が広くてここまでドラクエが長く愛されて来たのが本作でよく分かりました。
ただヌルゲー仕様に頼り過ぎた感じがあるので、次ドラクエをやる時はしっかりと歯応えのある遊びが出来るようにしたいです。全体的に王道を突き詰め、その結果一種の芸術にまで昇華された傑作だと感じました。