今回のレビューはこちら。
2021年にバンナムが発売したアクションRPG。『テイルズ オブ』シリーズのチームが手掛けた新規IPですね。
去年の11月辺りに買ってたんですが、結局本格的に遊ぶのはそこから時間が経ってしまいました。
取り敢えずユイト編、カサネ編両方のクエストを全てクリア、両編の各キャラ&チーム絆エピソードをフルコンプしてストーリーをクリアしました。
ここまでのプレイ時間は77時間。
かなり長かった…想定外ですねこれは。
以下、レビュー。
良かった所
爽快感があって楽しい戦闘
本作の戦闘で最もユニークと言えるのは主人公の特殊能力となる"念力"による投擲アクションでしょう。
フィールド上に投棄されてある廃車や木材、岩や鉄材など。下の紫色の念力ゲージが許す限りではありますが、ターゲットロックした相手に念力で持ち上げて投げつけることで敵にダメージを与えられます。
あまりやれることも多く無い序盤であっても、基本的な軸となる攻撃手段は弱攻撃/強攻撃の連打とこの念力であり、フィールドを駆使した独特な戦闘を楽しめると思います。
中には単に投げつけるだけではない特殊な念力アクションを求められる物もあります。これを発動するとこんな感じで種類によって様々なQTEが発生します。
これが中々に種類豊富です。板の上に乗ってサーフィンみたいに敵を蹴散らしたり、灯油の詰まったトラックを大爆発させたりしてユニークな技が多く飽きさせません。
フィールドの環境に依存するタイプの技も多いので、作品への没入感も高められてとても良いです。
この特殊な念力はダメージが高く中には状態異常を与えることで戦闘を有利に運べるので、積極的に駆使して行きましょう。
また、念力と並びもう一つユニークな要素となるのが仲間キャラの"超脳力"の効果を時間制限で主人公に発動させることが出来る"SAS"。
ここで出て来た専門用語の超脳力と言うのは本作に登場するキャラ達の特殊能力であり、前述の主人公の念力もこれに当たります。"発火"や"電撃"と言った攻撃的なものや、"透視"や透明化"と言った補助的なものまで仲間キャラの持つ脳力の種類は様々。
合計9名の仲間キャラの脳力を主人公達が一時的に借りることが出来るのがこのSASです。これを発動することによって通常攻撃に属性が追加されたり、透明化して相手に気付かれず不意をつけたり様々な戦術が実現可能となります。
致命傷となりそうな攻撃にすんでの所で"硬質化"を発動してノーダメージで終わらせるなんてことも可能なので、ただゴリ押しで攻めるだけでは無く考えて戦えるのも面白いですね。
本作の戦闘は一言で言えば「ARPG版デビルメイクライ」って感じです。コンボ表示こそありませんが、攻撃手段の手札を適宜とにかく切って切って切りまくることによる怒涛の連撃が基本となる点が似てると思います。
全体的にゲームスピードは非常に速くモーションもキビキビしてるので、DMC系のスタイリッシュアクションが好きな人は本作のアクションを楽しめるでしょう。
ストーリーが進むごとにどんどん出来ることが増えるし強化の幅も広がるので、尻上がりに楽しさは増して行くと思います。
ダブル主人公でボリューミーな二編構成のシナリオ
本作はダブル主人公の体裁を取っており、男性主人公のユイトと女性主人公のカサネのそれぞれ二人の視点でストーリーを体験出来ます。
二人の主人公はそれぞれ性別とキャラデザだけでは無く性格や境遇も全く異なっており、それゆえにシナリオの感じも大分異なります。
ざっくり言えばユイト編はラスボスの因縁的にも「表面のスカネク」と言う感じですが、カサネ編は「裏面のスカネク」と言った所。個人的にはユイト編からの攻略を推奨したいですね。
ユイト編では「あいつ何だったの?」ってキャラがカサネ編では活躍してたり、かなり重要な情報なのにあっさり気味な説明で終わった話もカサネ編ではかなり深く切り込まれたりしてます(逆もまた然り)。
温厚で正義感が強くあまり人を選ばない性格のユイトに対し、カサネは少々人当たりが強く無愛想なので、その点においては人を選ぶかもしれませんが。
勿論、そんなカサネも主人公としてしっかり成長して行くのでご心配無く。
また、それぞれの主人公にはアクション面でも性能差があります。
ユイトはオーソドックスに剣を振り回すのですが、カサネは小型の飛び道具複数を念力で操る範囲攻撃や遠距離攻撃がメイン。
ユイトの戦闘スタイルに一度慣れるとカサネの戦闘スタイルが少し慣れるのに時間が掛かるかな、と思いました。攻撃力だとどうしてもユイトに劣ってしまいますからね。
途中でユイトとカサネが対立する展開があり仲間キャラもそれぞれ均等に配分されるので、馴染みのSAS脳力も結構変わります。
それぞれやり込めば概ね30〜40時間で終わる内容となっており、結構ボリュームがあると言えるのでは無いでしょうか。
魅力のあるパーティーキャラ達
SAS脳力を付与してくれる仲間達ですが、これに関しては全員魅力的と言えます。
外見や表向きの性格はありがちな属性寄りというかテンプレ的ですが、みんなそれぞれに異なる境遇と悩みや考え、成長があり一人の人間としてとても好感が持てる個性的な良い奴らばかりです。主人公の二人も含め、ゲームを通してパーティーキャラは全員好きになれました。
仲間との個別エピソード(絆エピソード)は各キャラに4つか5つまでそれぞれ主人公二人分が用意されており、これはメインストーリー進行の為のフェイズの合間に発生する"スタンバイフェイズ"で進行可能。
どの内容もフルボイスで魅力たっぷりにキャラを掘り下げてくれる丁寧なエピソードばかりなので、これは戦闘と同じくらい本作を手に取った上で楽しんで貰いたい要素の一つですね。これによって"絆レベル"が上がることで仲間との連携技が使用可能になったりして戦闘でも旨みがあるので、積極的に進めましょう。
単に仲間の魅力を掘り下げるだけで無く、メインストーリーの補完や伏線張りの役割を果たす話も割と多めです。ユイト編のカゲロウのエピソードなんかはこれ本編でやった方がいいんじゃ…と思ったりもしました。
個人的には、シデンなんか凄く好きですね。
表向きの性格はキツいですが本質はとても真面目で純粋な奴で、絆エピソードを通して印象が大きく変わるキャラの一人だと思います。
また、絆レベルは仲間にプレゼントを積極的に渡すことで上げることも出来ます。
このプレゼントは一度渡すと主人公達が居住を構える"アジト"に仲間が飾ってくれるので、プレゼントすればする程どんどんアジトが賑やかになって行きます。
ちなみにプレゼントはすればする程、"チーム絆レベル"と言うものも上がります。
レベル4だとパーティーキャラの日常回みたいな特殊な絆エピソードがアンロックされるので、レベルMAXまではキツくてもそこまではやり込んでみて損は無いと思います。
気になった所
ストーリー周り色々
一応言っておくとストーリーは概ね面白いです。
割と人によっては精神的に来る演出や設定もありますが、基本的にJRPGとしては王道展開で伏線の張り方も上手かったと思います。二編構成から成る相互補完の体を取った構造もグッド。
ユイトとカサネが男女主人公だからって恋愛関係には一切発展しないのも良いです。それぞれ個人として自立してるからこそ好きになれた面も大きいですし。
ただ、世界や設定が結構壮大な割に本筋がちょっとこじんまりしてるというか。
何となく狭い人間関係の内ゲバに終始してた感が否めません。もう少し物語を広げようがあった気がしなくもないです。
他にはあまりプレイヤーの思い入れが無い内にキャラが早々に死んでしまってそれが尾を引いてたり、終盤も終盤で唐突にラスボスの過去が断片的に明かされたり。演出に対し感情移入が追い付かない面が割とあったりしました。
中にはメインストーリーではそこまで目立った見せ場や活躍の無いパーティキャラがいたりするのも勿体無いなと感じましたね。なまじ一人一人がとても魅力的なだけに。
特に、ストーリー進行が上の画像らみたいにほぼ紙芝居というか漫画のコマ送りというか…。これはちょっとどうかと思いました。勿論ムービーもありますが、結構少なめです。
ムービーが少ないことそれ自体は寧ろ良点なのですが、戦闘シーンですらこんな感じで進行するパターンが多くてあまり迫力が感じられません。
しかも一つ一つのイベントがかなり長いのでコントローラーを置く時間や機会が必然的に長く多くなり、正直何度か「アニメ見てるのかな?」って気持ちになったことも多々あります。
ですが、最初に言った通りストーリーは概ね面白いです。キャラ魅力にしてもそうですが、JRPGとしてのツボはしっかり抑えてはいると思います。
まとめ
ストーリーは演出が少々足を引っ張ってますが、それ以上にとても良く出来た戦闘システムとキャラクターの魅力が本作のアピールポイントと言えます。
特にキャラクターは本当に素晴らしいですね。一人一人が生き生きしてて、ドラマCDでもいいから彼らの日常なり何なりを知りたいとすら思ったくらいです。
世界で一応ミリオンヒットはしてるみたいなのでそこそこ売れてはいるそうですが、もう少し売れてもいいんじゃないかなと思いましたね。新規IPゆえの粗さや至らなさはありますが、正に隠れた良作と言った作品でした。