今回のゲームレビューはこれ。
以前当ブログでもレビューした『魔女の家』や『青鬼』『ゆめにっき』と並び、一時期ゲーマー間にフリゲ旋風を巻き起こしたkouri氏の名作フリーゲーム『Ib』。
今作は2022年にSteamで配信されたリメイク版となります。来月にはスイッチでも配信されるので気になる方は是非。
はい、この度初めてのSteamゲーです。ですが僕の低スペPCでは大作を遊ぶなんて夢のまた夢。
本当はスイッチ版を待つ予定でしたがフライングしてしまいました。
今作では真・ゲルテナ展をコンプリートし、全エンディングを鑑賞。ここまでのプレイ時間は10時間。
以下、レビュー。
良かった所
やり込み要素の追加を始め、原作から様々な要素が見直されている
一応言っておくと、自分が原作を遊んだのはリリース直後くらいだったと思います。
その後エンディング追加など色々アプデがされたのは知ってたのですが、それらに関しては一切確認はしておりませんでした。なので、今回のレビューにはそのアプデからの要素も踏まえたものとなります。
で、まず今作のリメイクを遊んで思ったのが主にUIがかなり見易くお洒落に変更されていたことです。
イラストやドットは変わらずkouri氏の画風そのままに、テキストでは立ち絵が採用されていたり体力ゲージの絵が変わっていたりして、スマホ版の『魔女の家』同等、グラフィック的な部分はほぼ全てが刷新されています。
任意のズーム機能やキャラクターとの会話機能もあったりして、臨機応変に活用しつつゲームを進めて行きたい所です。
また、原作の謎解き要素やギミックは一部かなり大きく変更及び追加がされていました。
特に中盤からそれはかなり顕著に現れ、ティーカップの移動パズルや新たなエネミーの追加など、原作を遊んでても新鮮な気持ちで楽しめると思います。
更に、やり込み要素として本作で追加されたのが二週目以降解放される"真・ゲルテナ展"。
こちらは所謂ギャラリーであり、作中で登場した美術品のタイトルを「正確に」把握することで全150点もの作品+αをじっくりと鑑賞出来る正真正銘の普通の美術館となっております。
周回におけるセーブデータ上書きでもチェックした作品の数は引き継ぎでカウントされるので、誰でも比較的楽にコンプリート出来ると思います。
全ての作品を見たご褒美もちゃんと用意されているので、やり込みたい方は隅々まで作品を鑑賞すると良いでしょう。
他のホラーゲームには無い、独特なアイディアから成る舞台
ホラーゲームと言われて思い付くのは主に『バイオハザード』シリーズに代表されるゾンビ系や、『零』シリーズなどの幽霊系だと思います。或いは『魔女の家』みたいな得体の知れない恐怖の館なども王道でしょうか。
そう言う意味では、本作はリリースから10年経った現在でも唯一無二な個性があると思います。
舞台は"ゲルテナ展"と呼ばれる美術館。両親と一緒に美術鑑賞に来ていた幼い少女イヴは、とある作品を見てしまったのをキッカケに不気味な世界へとたった一人突如引き摺り込まれます。
この不気味な世界と言うのは、本美術館におけるタイトルにもなっているゲルテナと呼ばれる芸術家が作り出した作品達が文字通り「生きている」世界。
例えるなら『GANTZ』のダビデ星人みたいな奴らがウヨウヨいる世界に迷い込んでしまい、仲間との出会いなどを通してゲルテナ世界からの脱出を図ると言うもの。
ホラーにおけるエネミーや謎解きファクターと成るのが芸術品であると言うのは、やはり他のホラゲーと比較してもかなり作者のセンスによる物が大きいのでは無いかなと思います。
絵画から女性の上半身が飛び出て這いずり回って来たり、絵画のお題に答えたり、芸術作品が持つ特有の不気味さを時に恐ろしく時に面白おかしく表現した魅力的な舞台は見事です。
一見何の意味もなくその辺に飾ってあるだけの作品にもかなり重要な意味があったり("聞き耳"、"告げ口"など)して、単純ながら非常に奥が深いです。多くの謎やゲルテナの人物像は最後まで詳しく明かされないのもあって想像の余地が非常に多く、芸術作品のように色々な視点から様々な考察が楽しめる作品となっています。
リリースから10年以上経った今でもコアな人気を誇る今作ですが、この空気感含めファンから長く愛されるのも納得の作り込みだと改めて思いました。
考察が好き、と言う方には非常に深く刺さる作品では無いでしょうか。
実質10通り近くにも及ぶエンディング
本作はマルチエンディング。種類としては合計7種類ですが、特定のエンディングには派生がありその全てを網羅しようとすると10種類以上もあります。
派生はともかく、個人的には主要7種のエンディングは全て見ることが推奨されるのではないかな、と思います。どのエンディングにもそれぞれに味があり、 キャラクターの魅力を深めてくれるのではないかなと。
完全なるハッピーエンドを用意してないのもこの時代のフリーホラゲらしいです。演出もあって中々強烈なエンディングも用意されているので、色んな意味で印象に残ることは間違いありません。
中には挿絵が挿入されているエンディングもあり、これは真・ゲルテナ展の完全完成には必須となります。
ノルマ的な部分をやり込みたいと言う方は是非これらだけでも網羅するといいと思います。
気になった所
ホラーゲームとしての恐怖感はかなり物足りない
正直、ホラー的な要素は青鬼や魔女の家などと比較してもかなり緩めに見えます。
あれらは来ると分かってても怖いのですが、正直こっちは来ると分かってたら全然怖くないですね。寧ろ周回すればする程、エネミーやびっくり要素に愛着が湧いてしまいます。
特にホラーゲームを積極的にプレイされる方には少々物足りないのではないかなと思いましたね。不気味ではあるけど…と言う感じで。
kouri氏曰く、非常に幅広い層を想定してるそうなのでそうなるのも当然と言えば当然ですが、ゆえにこそ他のホラゲーとは全く異なる世界観で多くの人の心を射止めたとも言えます。この辺はゲームに何を求めるかで一長一短でしょうね。
まとめ
10年ぶりくらいにクリアしましたが、この独自の世界観は今遊んでも全く魅力が損なわれていないのが凄いと思いました。やはり一時代を築き上げた作品はいつ遊んでも色あせぬ魅力があると言えます。
色々な要素がパワーアップした令和版Ib。新規の方にも既存プレイヤーにも等しく遊んで欲しい良作でした。